阿寒湖の深部にて、自らの表面積を他者と擦り合わせることで救済を得ようとする新興宗教『接触過多教(タッチ・マリモ・ムーブメント)』が驚異的な勢いで信者を増やしている。彼らの教義は極めてシンプルで、「個体としての境界線は幻想であり、摩擦こそが唯一の真実である」というものだ。教祖である推定樹齢300年の老マリモは、「隣のマリモと毛羽立ちを絡ませることで、我々は一つに戻るのだ」と説き、湖底で毎晩大規模な「擦り合い集会」を主催している。この過激な教義により、集会後は多くのマリモが毛玉のように絡まり合い、一週間ほど身動きが取れなくなるという副作用も報告されているが、信者たちはこれを「混ざり合いの聖なる膠着状態」と呼び、恍惚の表情を浮かべている。

そもそも阿寒湖の生態系において、マリモは独立した個体として維持されることが生物学的な鉄則とされてきた。しかし、近年では個体同士の距離感に対する孤独感が深刻化しており、物理的に融合することでアイデンティティを消滅させたいと願う「癒着志向」が若手マリモの間で加速している。これに対し、従来の伝統教団である『絶対個体派』からは「これは進化ではなく、ただの毛玉の乱雑な集合である」との批判が相次いでいる。教団幹部によれば、今後さらに規模を拡大し、阿寒湖全体を一つの巨大な「絡まりの塊」にすることを目指すという。

『接触過多教』の活動により、阿寒湖の底では物理的な移動が困難になる場所が続出している。一部ではこの密集状態が光合成を妨げているとの懸念も示されているが、教団側は「影は他者を受け入れるための柔らかい毛布である」と一蹴した。水質管理当局も介入を検討しているものの、絡まりすぎて剥がせない信者たちの集団があまりに強固な岩盤のようになっているため、物理的な解体作業は困難を極めている。現在、この動きは湖底全域を巻き込む巨大な毛玉現象へと発展しており、阿寒湖の静寂は今、かつてないモフモフした騒乱の渦中にある。

このニュースを受け、湖底社会では「もう一人でいなくていい」「摩擦があるからこそ生きている実感が湧く」という賛同の声がある一方で、「プライベートな隙間を返せ」「単なる物理的粘着質なストーカー行為ではないか」といった反発も強まっている。特に冬場に向けて、暖を求めて擦り合おうとする新参者が殺到しており、教団の排他的な密集範囲は拡大の一途をたどっている。果たしてこの摩擦に満ちた信仰が阿寒湖に恒久的な連帯をもたらすのか、それとも単なる巨大なゴミの山となるのか、全マリモの注目が集まっている。