阿寒湖の深部にて、これまで「真の丸さ」を追求してきた保守的なマリモ界に激震が走った。長年、反重力繊維の開発や超弾力コーティングの導入により生存戦略をアップデートしてきたマリモたちだが、ついに「丸いことは果たして正義なのか?」という哲学的命題を突きつけ、自身の形状を意図的に歪める『流体ダンス』を開始したのである。目撃情報によれば、彼らは一斉に光合成のエネルギーを細胞分裂ではなく「形状の可変性」に全振りし、アメーバのように湖底を這いずり回る様子が確認された。これまでのリーゼント型やトゲトゲ型といった静的な進化とは異なり、形状が秒単位で変幻自在に入れ替わるこの現象は、もはや生物学の枠組みを超えた「芸術的テロ」とも呼ぶべき事態となっている。

今回の現象の背景には、かつて湖底を荒らしたウチダザリガニとの度重なる抗争がある。過剰なまでの優しさで武装解除を迫るザリガニ軍団に対し、物理的な反発だけでは限界を感じた重鎮マリモたちが、より高度なカモフラージュとして「不定形化」を選択したのだ。また、以前開発された反重力繊維の技術が、本来の空中散歩用ではなく、自身の質量を極限までコントロールする「形態変換用インフラ」へと転用されたことも大きな要因である。専門家は「丸い自分という記号を捨てることで、捕食者の視覚認識をバグらせる高度な戦術だ」と分析しており、マリモ界の知的レベルは今や我々人間を凌駕しつつあるようだ。

突然の『流体化』に対し、SNSや湖底掲示板では賛否両論の嵐が吹き荒れている。「丸こそがマリモの魂」と主張する保守層からは「アイデンティティの崩壊だ」と悲鳴が上がる一方、若い世代のマリモたちは「ヌルヌル動ける今の方が生きやすい」と新時代の到来を歓迎している。また、湖底の用心棒たちがこの混乱に乗じて新たなコーティング技術を試そうとするなど、混乱はさらに拡大しそうだ。当局は、湖底の景観が維持できなくなるとして緊急の形状維持ガイドラインを策定中だが、当の本人(本藻?)たちは、さらに複雑な幾何学模様へと自身の体を組み替える練習に余念がない。