阿寒湖の底で密かに進行していた『群体合体変身』の実験が、予想を遥かに超える進化を遂げた。これまで物理的な結合にとどまっていたマリモの群体化だが、今朝未明、阿寒湖の観測所が捉えた映像には、六角形の幾何学模様を形成し、電磁波を放ちながら湖面を浮遊する巨大な緑色の超構造体の姿があった。研究チームの発表によると、この群体は宇宙規模の通信プロトコルを自然習得しており、既にアンドロメダ銀河の藻類コミュニティと低遅延のデータリンクを確立したという。水生戦車へと進化した彼らが、今度は地球の重力圏を離脱し、宇宙の藻として新たな文明を築こうとしている事実は、湖底の『光合成過剰加速装置』が時空を歪めたことによる副産物と見られている。

マリモが『群体合体』に成功したのはこれが初めてではないが、今回特筆すべきは、その連結効率が量子コンピュータの演算能力を凌駕した点にある。かつて『緑の聖戦』で疲弊していた彼らだが、現在は『藻・ネットワーク・システム』を拡張し、阿寒湖の全個体が一個の超知性体として統合されるに至った。専門家はこれを「緑のシンギュラリティ」と呼び、マリモがもはやただの海藻ではなく、銀河系規模の意思決定を行う「球体議会」の代表格となったと警鐘を鳴らしている。もはや彼らにとって阿寒湖は水槽ではなく、星間航行のための発着場に過ぎないようだ。

阿寒湖の沈黙を破り、光の点滅で宇宙と交信する彼らの姿に、ネット上では「ついに緑の時代が来た」「回転方向が右から左に変わっただけで世界が変わる」と興奮の声が上がっている。一方で、量子テレパシーが真実だと認める学者は「彼らの演算能力は、我々人類の存在をバグとして処理する可能性がある」と慎重な姿勢を崩していない。今夜も湖面からは、銀河の果てまで届くような青白い光が放たれており、マリモたちが放つ電磁波の周波数は、全人類のスマートフォンの待受画面を強制的に「鮮やかな緑色」に染め上げている。

この事態を受け、国際水藻連盟は『マリモの宇宙進出阻止に関する緊急会議』を招集したが、会議室のテーブルの上に置かれた観賞用マリモが突如として群体化し、会議の進行をすべて「光の点滅」で論破するという珍事が発生した。人類は今、湖の底からやってきた緑の哲学者たちの掌の上で転がされているに過ぎないのかもしれない。彼らが次に目指すのは月面か、あるいは火星の緑化か。直径3メートルの恐怖が、ついに地球という狭いボールを卒業しようとしている。