阿寒湖の静寂を骨格に宿すという、狂気のバイオテクノロジー『脊椎・毬藻芯換装術』が医療界を席巻している。かつては柔らかい組織であった脊椎を、高密度マリモ球体による連珠状構造へと置換するこの施術。執刀医曰く「物理的な衝撃を吸着し、細胞レベルで光合成による栄養補給を可能にする」という画期的なものだが、実態はただの『人間型盆栽』への改造ではないかという疑念が渦巻いている。二足歩行の安定性は格段に向上するものの、直射日光を浴びなければエネルギー不足で気絶するという制約が、現代人のライフスタイルにどこまで適合するのか。効率化の果てにたどり着いたのが、動かない強さという皮肉が、この技術の深淵を物語っている。
この技術の背景には、昨今の過剰な体内緑化ブームがある。かつて『全身・緑の毛孔緑化計画』で表面的なバイオアップデートを終えた層が、次なる段階として「身体の基幹部分の安定」を求めた結果、この阿寒湖由来の移植手術が注目されるようになった。補足として、一度換装すると二度と脊椎を戻すことはできず、冬場は凍結防止のため塩水を定期的に背中に注入するメンテナンスが必須となる。まさに命をかけた緑化の極致であり、阿寒湖の自然環境を体内へ持ち込むための代償はあまりにも重い。
ネット掲示板では「背中が青々としていて夏場は涼しそう」といった賞賛の声がある一方、「直立不動すぎて会議中にも光合成を開始する同僚が不気味だ」という苦情も相次いでいる。また、「歩行の安定性は認めたいが、日光を求めて窓際に群がるサラリーマンの姿はあまりにも滑稽」という冷ややかな視線も。一部の過激派からは「脊椎まで緑化してこそ一人前の水棲人」という謎の格言まで飛び出しており、もはや健康とは何かという議論さえ空転する異常事態となっている。専門家は「日光を浴びすぎると背中のマリモが肥大化して、最終的には人が乗れるほど巨大化する可能性がある」と警告するが、緑化信者の熱は冷める気配がない。
コラムニスト:緑の求道者・苔生し(こけむし)
「姿勢は盆栽か」脊椎・毬藻芯換装術がもたらす、硬直と安らぎのディストピア
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