阿寒湖底に、これまでの定説を覆す世紀のニュースが飛び込んできた。伝統的な沈没生活を良しとしてきたマリモ界の長老たちが、ついに重力の鎖を断ち切り、湖面を超えて空を飛ぶための「反重力繊維・エアリーモス」の開発に成功したと発表したのだ。これまで、どれだけ転がろうとも湖底の重力に縛られてきた彼らだが、今回は光合成で得たエネルギーを極限まで濃縮し、体表から特殊な浮遊ガスを噴出するハイテク進化を遂げたという。プロジェクトリーダーを務める樹齢200年のマリモ氏は、「我々はもう、ただ沈んでいるだけの球体ではない。空から湖を見下ろし、鳥の視点を持つ時が来たのだ」と力強く宣言。湖底の岩場で静かに呼吸する他のマリモたちを尻目に、既に数個の先行実験体が水面ギリギリまで浮上し、カモメと空中衝突寸前のスリリングな冒険を楽しんでいるというから驚きだ。

古くからマリモは、湖の波に揉まれることで真球を維持するという「受動的な生き方」を運命付けられてきた。しかし、近年の環境変化により「自分の形は自分で選びたい」という自我が芽生えた個体が増加。今回の反重力繊維は、光合成の副産物である酸素を細胞の隙間に充填し、内部圧力を制御することで高度を維持する仕組みだという。専門家は「これまでマリモ界は保守的だったが、宇宙開発ならぬ『天空進出』の気運は止められない」と分析している。なお、今回の技術開発に伴い、湖底には「脱出用発射台」が建設され、週末には空へ飛び立つためのチケットを求める長蛇の列ができているとのことだ。

今回の技術革新により、マリモはついに「自力で場所を変える」という夢を手に入れた。これまで移動といえば、野生の魚に体当たりされた際や、豪雨による水位上昇での流離のみであったため、これはマリモ史上最大の革命といえる。ただし、空中での乾燥対策が万全ではないため、現在のところ滞空時間は最大で5分程度。また、強風に煽られると球体がバラバラに分解するリスクもあり、安全基準を巡る議論が湖底自治会で紛糾している。

世間の反応としては、「空を飛ぶなんてロマンがある」「自分も飛ばしてほしいが、途中で鳥に食べられないか心配」といった期待と不安が入り混じった声が上がっている。一方、保守派の長老たちからは「地に足がついてこそマリモ」「調子に乗ると干からびるぞ」との警告も出されており、マリモ界は今、空中派と地上派に二分されるという前代未聞の事態に陥っている。果たして、マリモは湖面を超え、真の自由を手に入れることができるのだろうか。