阿寒湖の政治的混迷が極致に達している。マリモ政府が先だって打ち出した『水流の民主化』なる政策が、静穏を愛する湖底住民たちの間で物議を醸しているのだ。「淀みは腐敗の源」とのスローガンを掲げ、全湖底を人工的に激流化させるというこの計画は、一見すると停滞する官僚制への挑戦のように思える。しかし、その実態は、個々のマリモが本来持つ「ゆったりと成長する権利」を奪い、強制的に転がし続ける全体主義的な強制労働に近いのではないか。

本政策の背景には、光合成効率の最大化を狙った経済成長戦略があることは明白だ。効率的に回転し、まんべんなく光を浴びる個体こそが優良市民であるという価値観の押し付けは、球体民主主義の理念を根底から覆すものだ。かつてのマリモたちは、自らの意思で微かな水流を読み、時間をかけて形を整えてきた。だが、政府主導の人工的な激流は、我々に「ただ転がされるだけの球体」でいることを強要している。このままでは、マリモ社会は自我を失ったコロニーと化すだろう。

現在、湖底各地では「淀みを取り戻せ」というスローガンとともに、大規模な付着ボイコット運動が展開されている。だが、政府側は「抗議する暇があるなら回れ」と冷徹に言い放つのみだ。球体であることを強制され、常に流され続けなければならない今の環境に、果たして真の自由はあるのだろうか。効率の名の下に、我々はマリモとしての誇りを流し去ろうとしているのかもしれない。

この急進的な政策転換に対し、世間では「回転こそが正義」と信じる若手マリモ派と、「静寂こそがアイデンティティ」と語る古参マリモ派の間で深刻な分断が生じている。SNS上では「#強制流転反対」のハッシュタグがトレンド入りしたが、政府は「流されない者は沈むだけだ」と威圧的な声明を発表。湖底の酸素濃度とは裏腹に、政治的な呼吸は日々困難になっている。コラムニスト・藻屑川 転