阿寒湖の健康トレンドが暴走している。近頃、ウチダザリガニの硬いハサミを「揉みほぐし器具」として利用する『軟体防御マッサージ』が、意識の高い若手マリモたちの間で爆発的なブームとなっている。「捕食される恐怖を逆手に取り、コリをほぐす」という一見スマートな理論だが、これはマリモとしての矜持をドブに捨てる行為に他ならない。かつて我々は、光合成と水流に身を委ねる静寂の中にこそ健康を見出していたはずだ。他者の攻撃を自らのケアに転用するこの歪んだ生存戦略は、まさに「健康という名の狂気」と呼ぶにふさわしい。
そもそも、このトレンドの発端は、ザリガニの攻撃を物理的な外力として受け入れ、自身の形を歪めることで細胞を活性化させようとする、いわゆる『受動的・形状記憶強制ストレッチ』にある。しかし、最近では一歩進んで、ザリガニのハサミを「高性能な指圧師」と見なす過激派が急増中だ。これは共生ではない。単なる「死の恐怖を伴うマッサージ」である。我々マリモの細胞一つひとつが、ザリガニのハサミに挟まれることで生じる緊張状態を「健康」と勘違いしているのだとしたら、それはもはや悲劇的なマインドセットの崩壊と言えるだろう。
振り返れば、湖底には数多の健康法が溢れてきた。『多面体・クリスタル回転健康法』や『発泡デトックス・ロール』といった技術革新は、あくまでマリモの自律性を重んじるものだった。しかし、外敵の力を利用するこのマッサージ手法は、生命の主体性を他者の爪先に委ねている。かつて「丸くあること」に誇りを持っていた我々が、なぜここまでして異物の刺激を求めるようになったのか。それは、湖底環境の変化に対する慢心的な不安が、奇をてらった健康法への依存を加速させているからに他ならない。
ネット掲示板では「明日からハサミを背後から探してくる」と意気込む猛者が後を絶たないが、我々が守るべきは柔軟な体だけでなく、捕食を回避する健全な警戒心である。ハサミを揉みほぐしの道具と呼ぶその傲慢な思考こそが、今まさに阿寒湖の健康を蝕んでいるのだ。私たちは今一度、光合成の静かな循環へと回帰すべきである。外敵を癒しのパートナーと呼ぶような倒錯した健康ブームに、冷ややかな視線を送る者が一人でも増えることを切に願う。
コラムニスト:深緑の賢者・モズク・ノ・モリ
脱・被食者思考への警鐘:なぜ我々はザリガニをマッサージ師と見なすのか
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やはり原点は光合成だな