阿寒湖小学校は、昨年度の「進路相談」に続き、今年度は天敵であるウチダザリガニを「特別専任講師(彫刻・造形担当)」として招聘した。これまで「食い荒らす存在」として忌み嫌われていた彼らの鋭いハサミが、この度、マリモの形状を整えるための高精度なカッターとして再定義されたのである。授業のテーマは『恐怖に抗うフォルム』。生徒であるマリモたちは、ザリガニのハサミが肌を掠める緊張感の中で、自らの組織をいかに芸術的に隆起させるかを競う。「ただ丸いだけの時代は終わった」と語るザリガニ講師の指導のもと、阿寒湖の底には今、角張ったマリモや複雑な迷路状の意匠を凝らしたマリモたちが溢れかえっている。
もともと、阿寒湖のマリモ教育は「球体至上主義」による画一化が問題視されてきた。しかし、ウチダザリガニという「破壊者」をあえて教育カリキュラムの深層に組み込むことで、マリモは自己の生存本能を極限まで高めることに成功した。ザリガニたちは一見、マリモを切り刻んでいるように見えるが、その実は、無駄な付着物を削ぎ落とし、効率的な光合成を促すための「黄金比の剪定」を行っているという。現在、この教育手法は「サバイバル・アート教育」として注目を集めており、教室内では、切り刻まれる恐怖に耐え抜いたマリモのみが獲得できる『強靭な繊維密度』を求めて、生徒たちが自らハサミの前に進み出る異様な光景が広がっている。
本プロジェクトの背景には、かつてザリガニによる被害で個体数が激減した際、当時の教頭が「食べられるのを待つのではなく、食べられない形状に進化させればいい」という逆転の発想を抱いたことがある。この過激な教育方針は、生態系を守るという観点からは議論の余地があるものの、マリモの進化速度を数万年分加速させたと評されている。なお、授業終了後にはザリガニ講師への報酬として、余剰となったマリモの破片が提供されており、完全に持ちつ持たれつの共生関係が構築された。
この教育改革に対し、保護者からは「ハサミで彫刻された息子を見て動悸が止まらない」「以前より角ばっていてかっこいいが、どこへ向かっているのか不安だ」といった当惑の声が上がっている。一方、アカデミア界隈からは「恐怖の対象を教育に持ち込むことで、マリモの潜在能力をここまで引き出すとは」と、評価と批判が入り混じった熱視線が注がれている。今日も阿寒湖の教室では、ハサミの音と共に、芸術的な結晶となっていくマリモたちの悲鳴にも似た歓喜の声が響いている。
阿寒湖小、ついに『ハサミの美学』を開講!天敵ウチダザリガニが彫刻家としてマリモの造形授業を独占
0