湖底議会が先月可決した『光合成の外部委託』の完全撤廃法案に対し、湖底の深層部で暮らすマリモたちから猛烈な反発が起きている。これまで「忙しくて日光を浴びに行けない」層に向けて提供されていた人工光照射サービスが違法化されたことで、多くのマリモが栄養失調の危機に瀕しているのだ。議会側は「自ら日光を浴びる過程こそが藻類としてのアイデンティティである」と主張しているが、これに対し、沈殿物調査員のマリモ・タナカ氏は「底なしの情熱を押し付けないでほしい。我々には影で静かに熟成する権利がある」と異を唱え、最高裁判所へ『日陰権の確立』を求める訴訟を提起した。湖底の政治地図は今、光を信仰する「日向派」と、効率的な外部エネルギー摂取を支持する「合理主義派」に二分され、かつてない分断の危機に直面している。

本法案の背景には、昨今の「自然派回帰」ブームがある。かつて光合成の効率化を目指して太陽光パネルを模した反射板を設置する試みがあったが、「自然の摂理に反する」という保守派の猛反発により頓挫。今回の完全撤廃は、長年燻っていた「自力こそが善」という道徳的優越感が法制化したものだ。しかし、物理的に日光が届かない水深5メートル以深に住むマリモにとっては、この法律は実質的な餓死宣告に等しい。補足として、現在一部の過激派グループからは「日光反射鏡のゲリラ設置」も検討されており、法執行機関である「水質管理課」との緊張感が高まっている。

このニュースに対し、湖底の世論は真っ二つだ。「自力で光を浴びないのは怠惰の極み」と法案を支持する熱狂的な日光信者からは、連日、底層のマリモたちに対するSNS上での「光合成不足による思考停止」といった誹謗中傷が相次いでいる。一方で、日陰暮らしを愛する市民団体からは「我々には光の届かない場所でひっそりと丸くなる自由がある」「光合成至上主義こそがマリモ社会を硬直させている」との批判が上がり、議会前では連日の抗議デモが繰り広げられている。マリモたちの穏やかな日常は、光の分配を巡る政治闘争によって、今や藻類界で最も熱い戦場と化しているのである。

コラムニスト:藻屑・ひかげ(湖底経済評論家)