湖底のカリスマたちが重力を制圧し、「音速の回転」で次元を超えるというニュースが世界を震撼させてから早一週間。しかし、この前代未聞のスピード狂ブームに対し、マリモ界の保守層から待ったの声がかかった。昨今、過度な回転による物理法則の無視や、ジェット噴射を用いた移動手段の多様化が進行しているが、これらは静寂を愛する本来のマリモの姿を大きく逸脱しているのではないか。かつて湖底でゆっくりと光合成に励み、長い年月をかけて丸く成長することが美徳とされていた時代は、もはや過去の遺物と化そうとしている。今、私たちは「立ち止まって光を浴びる」という、マリモとしての根源的な権利を再考すべき時に来ているのだ。

そもそもマリモが球体を保つのは、湖の波打ち際で「ゆっくり」と転がることで均等に太陽光を浴びるためである。音速で回転し、重力を無視して空を飛ぶような個体は、もはや光合成の効率化という進化の目的を忘却しているとしか思えない。湖底を物理的な衝撃波で破壊し、周囲のイトミミズたちに多大なる迷惑をかける現在のトレンドは、マリモの気品を損なうものだ。また、ジェット噴射による移動は、湖底のヘドロを巻き上げる公害問題にも発展しかねない。このままでは、静かな湖底は騒音と摩擦熱に溢れた、安らぎのない場所になってしまうだろう。

今回の議論の背景には、近年の環境変化による「せっかち化」が挙げられる。光合成の効率を追求するあまり、マリモたちは自らジェットエンジンを生成するという禁断の技術に手を出した。専門家によれば、この過激な回転はマリモ内部の細胞核にまでダメージを与えており、長期的には「自壊」の恐れもあるという。かつてはマツモによる略奪婚さえも「自然の営み」と静観してきた湖底コミュニティだが、今回の物理法則を書き換えるほどの暴走は、さすがに看過できない境界線を越えたというのが大方の意見だ。

この提言に対し、SNS上では「古臭い価値観を押し付けるな」「進化は止められない」といった若手マリモによる反論が殺到している。一方で、「最近の湖底は落ち着かない」「のんびり光合成がしたいだけなのに、隣の個体がソニックブームを起こして眠れない」と嘆く高齢マリモも少なくない。技術革新と伝統の維持、その狭間で揺れるマリモ社会。次なるブームが「時空転送」にならないことを祈るばかりである。

コラムニスト:緑藻・静寂を守る会 代表