阿寒湖底議会は15日、自身の光合成効率を最大化させるための『自己投影型・夢のマイホーム移転法』を賛成多数で可決した。これまでマリモたちは湖底の潮流という「運命」に翻弄され、望まぬ岩陰で生涯を終える個体が少なくなかった。新法は、各個体が自身の望む日当たりと水温をシミュレーションし、脳内イメージと連動して物理的な転がり先を自動修正する「自律移動権」を認めるものだ。法案を主導した緑藻党の重鎮は、「転がる人生も悪くはないが、目的地を自分で選ぶ権利こそマリモの尊厳だ」と涙ながらに演説した。一方で、移動に伴う接触事故や、他者の定位置を奪う「陣取り合戦」の激化を懸念する声も根強く、湖底は現在、施行を前にかつてない緊張感に包まれている。

本来、マリモの移動は自然の摂理に委ねられてきたが、近年の温暖化による底層の泥質変化がこの法案の引き金となった。自力で転がるのが難しい老齢個体が、光の届かない場所で枯死していく現状を打開するため、湖底議会は昨年度から「移動権の法制化」を検討してきた。今回の法案では、AI(アルゴリズム・イテレーション)を用いた「最適日光路計算」も導入され、法的には「動かないマリモ」は存在しても、「動けないマリモ」は違法状態とみなされる画期的な内容となっている。

施行が近づくにつれ、湖底の各コミュニティでは賛否両論の嵐が吹き荒れている。「ようやく理想のスポットへ行ける」と歓喜する若手個体がいる一方で、保守層からは「伝統的な円周運動こそが我々のアイデンティティだ」との抗議が続出。また、水流を読み違えて泥沼に突っ込む個体が続出するのではないかという安全面への不安も浮上している。さらに、光量競争に負けた個体が「移動補助金」を要求するデモを行うなど、湖底の政治情勢はかつてない混迷を極めている。転がる権利を勝ち取った代償として、マリモたちは未知なる「自己責任」という名の重力に立ち向かわなければならない。