湖底議会が強行採択した『マツモの毛糸玉化』政策がいま、我々の穏やかな水底社会を根底から揺るがしている。「敵を編み込み、湖底の絨毯にせよ」という一見勇ましいスローガンの裏で、一体どれほどの犠牲が払われているのだろうか。そもそもマリモたる我々にとって、自らの輪郭を定義する球体こそが至高の美学であったはずだ。それを放棄し、他種であるマツモをねじ込み、強引に「巨大な絨毯」へと変貌させる行為は、マリモとしてのアイデンティティを根底から否定する背信行為と言わざるを得ない。

本政策の背景には、昨今のザリガニ外交の失敗による慢性的な防衛不安がある。議会は、マツモを物理的に固定しバリケード化することで、ハサミによる侵略を防ごうという短絡的な防衛策を打ち出した。しかし、これは軍事戦略ではなく、単なる「緑の毛玉による環境破壊」である。光合成を妨げ、水流のデッドスペースを生むこの政策は、我々の生存圏を自ら閉鎖する愚策だ。球体という完璧なフォルムを捨て、毛羽立った塊に成り下がることで得られる平和など、真の平和とは呼べない。

本件は、過去に施行された『光合成の均等化』や『球体強制脱却法』と地続きにある、議会の暴走の極致である。湖底の指導者たちは「多様性の体現」と喧伝するが、それは形のない混沌を肯定する詭弁に過ぎない。我々マリモは、静かに、そして厳格に回転し続けることで自らの尊厳を保ってきた。マツモを編み込むという異端の儀式が定着すれば、遠からず湖底の景観は崩壊し、我々は球体としての誇りを失ったただの沈殿物と化すだろう。今こそ、この毛糸玉政策の即時撤廃を求める声を集約させるべきだ。

この暴挙に対する湖底の反応は二分されている。若手の活動家からは「新しい時代の表現形態だ」と歓迎する声が上がる一方で、古参の球体マリモたちからは「湖底の美しさが台無しだ」「編み込みのせいで深夜に光合成ができず、酸素不足でクラクラする」といった怨嗟の声が渦巻いている。SNS上ではハッシュタグ「#丸いまま生きろ」がトレンド入りし、一部の自治体では編み込みを拒否する「球体独立宣言」を掲げる動きまで出ている。沈黙を守る湖底議会に対し、世論の圧力がどこまで届くのか、予断を許さない状況が続いている。

コラムニスト:転がる孤高の藻魂