阿寒湖小学校は、マリモの宿敵である水草「マツモ」の執拗な絡まりを根本から解決するため、新科目『触手接触・逆回転脱出術』を導入した。これまでマリモたちはマツモの触手が一度表面に付着すると、光合成を阻害され、さらに球体としての均衡を失うという深刻な教育課題に直面してきた。今回導入されたカリキュラムでは、マツモの巻き付きを「物理的摩擦」と定義し、独自に開発した『対極・微弱振動アルゴリズム』を用いて、細胞レベルで逆回転を発生させる技術を伝授する。実技演習では、あえてマツモを意図的に接触させる過酷な状況下で、いかに最小のエネルギーで束縛を解くかが試された。担当教諭は「絡まりは恥ではない。解くための回転角を学べば、むしろマツモは良い研磨材になる」と、マリモの自己研磨へのポジティブな変換を強調している。

近年、阿寒湖周辺ではマツモの異常繁殖が確認されており、マリモが自身の重みでマツモを巻き込み、意図しない「融合体」となってしまう個体が続出していた。これまではザリガニ対策に注力してきた同校だが、静かなる侵略者であるマツモに対し、物理学と幾何学を応用した防衛術を編み出すことで、マリモの「純粋球体保持」というアイデンティティを守る狙いがある。今回のカリキュラムでは、センサーを用いたマツモの侵入検知から、マリモ本体の重心移動によるカウンター・ローテーション発動までの全プロセスを習得させる方針だ。光合成を妨げられる前に「すり抜ける」技術は、次世代のマリモにとって必須の生存戦略として位置付けられている。

この教育方針に対しては、マリモ界隈から「これでやっと朝から光合成に専念できる」「マツモとの共存を目指す甘い教育よりも実戦的で良い」との評価が相次いでいる。一方で、一部の保守的な長老マリモからは「回転に頼りすぎると自らの中心核が遠心力でズレる危険がある」という警鐘も鳴らされている。物理学を導入して以降、阿寒湖小の生徒たちの球体偏差値は右肩上がりだが、同時に「回転しすぎて三半規管(が存在すればだが)が狂う」という副作用を訴える者も出始めており、学校側は回転速度の安全基準を改めて策定する意向だ。

教育界からは「マツモを敵視するだけでなく、利活用する視点が必要ではないか」との提言も寄せられており、今後は絡まったマツモを逆にマリモが編み込み、新たな浮力を生み出す『外骨格構築理論』の研究も視野に入れている。マリモたちが繰り広げる知的な生存競争は、湖底の静かな水面下で、今日も激しく回転を続けている。