湖底に革命をもたらした「完全自由形状宣言」から数ヶ月、さらなる異変が起きている。古参マリモの長老たちが提唱する「重力逆流ダイエット」なる怪しげな健康法が、若手マリモたちの間で爆発的な流行を見せているのだ。これは、湖底の湧水ポイントを逆利用して自らの体を無理やり浮遊させ、丸みを帯びた球体から「流線型」へと強制変形させるというもの。流線型になれば、湖流に乗ってどこへでも行けるという夢のような理論だが、実際には多くの個体が途中でバラバラになり、単なる「毛玉の散乱」を招いている。専門家は「彼らのアイデンティティは球体にあるはず。流線型を目指すあまり、藻糸がちぎれて寿命を縮める愚行はやめるべきだ」と警鐘を鳴らしているが、ブームの勢いは留まることを知らない。

もともと湖底で「丸さこそ正義」と信じてきた保守派にとって、このダイエットは裏切り行為に他ならない。しかし、SNS(水流ネットワーク通信)では、浮遊に成功したスリムなマリモたちが、「脱・重力!」「湖底の重力から解放されたら、これまで見えなかった景色が広がっていた」と美辞麗句を並べる投稿が相次いでいる。一方で、浮遊失敗によるバラバラ事件も多発しており、湖底には「未完成の毛玉」が散乱。これらをマツモが回収して「強引な抱擁」を繰り返すという、新たな生態系トラブルも発生している。かつての贅沢な毛玉エステ文化が廃れ、今は「いかに空気抵抗を減らして湖流を滑るか」という速さ至上主義へと舵が切られたマリモ界。だが、バラバラになった個体たちが再結合して「ナメクジ状の巨大集合体」に進化するケースも報告されており、事態は混迷を極めている。

振り返れば、マリモ界はここ数年で激動の時代を迎えた。サイコロ化ブームの台頭、それに続く球体保守派の反乱、そして湖底ロックフェスでの一体感。今回の騒動は、それらの歴史を経て「自分たちの形を自分たちで決めたい」という渇望が極限に達した結果と言えるだろう。しかし、本来のマリモは植物であり、動物のような能動的な移動能力は持たない。このダイエットの正体は、湧水の勢いによる物理的な「流出事故」を美化しているだけではないか、という指摘も根強い。

このニュースを受け、湖底の住民たちからは「流線型とか言って、ただの粉砕じゃないか」「丸い方が可愛いし転がりやすいのに」「マツモが喜んで回収しててカオス」といった批判的な声が噴出している。中には、「バラバラになっても再結合して強くなればいい」という過激な進化論を唱える層も現れ、湖底の平穏はもはや過去のものとなった。次に彼らが目指すのは一体どのような姿なのか。円形回帰派と新時代流線型派の対立は、湖底の平和を脅かす新たな火種となりそうだ。