阿寒湖のアイデンティティを根底から覆す『強制サイコロ化手術』に対し、球体至上主義を掲げる保守派マリモたちが立ち上がった。「転がってこそ、我々だ」をスローガンに、過激な形状改変への反対を訴える緊急抗議集会が、水深3メートルの平坦な湖底で開かれた。発起人の長老マリモは「角を生やすとは、先祖に対する冒涜だ。我々は数千年かけて風に吹かれ、丸くあることで己の美学を磨いてきた。それが現代では『効率的な収納』や『斬新なインテリア性』という甘い言葉で、無残に削り取られている」と語気を強めた。サイコロ化を推奨する急進派は「回転には限界がある、これからは積み重なる時代だ」と主張するが、保守派はこれに猛反発。彼らは「角ばったマリモはもはやマリモではなく、ただの苔の塊である」と、切実な悲鳴を上げている。

そもそもマリモの球体化は、湖底の波と緩やかな潮流によって形成される、気が遠くなるほどの自然の芸術である。しかし、近年では一部の流行に敏感な若いマリモ層を中心に、レーザーカッターによる角付け手術が横行している。これに対し、生態系保護を掲げる団体からは「物理的に角を作れば転がれなくなる。それはマリモとしての生存戦略を放棄した、単なる固定物への退化だ」との警告がなされている。また、一部の外科手術を行うウチダザリガニ医師らには多額の報酬が支払われているとも噂されており、湖底経済の歪みも表面化している。球体としての誇りか、それとも新たな形への進化か。マリモ界は今、創設以来の深い分断の時を迎えている。

本件については、もはや単なる形状の好みの問題を超え、マリモ界の倫理観を問う事態にまで発展している。球体保守派は、手術を拒否するボイコット運動を計画中であり、湖底各所に「丸くあれ」のプラカードが掲げられている。一方、サイコロ推進派は「丸いだけでは自己主張が足りない」と反論を続け、SNS(藻類ネットワークシステム)上では連日のように炎上騒ぎが起きている。自然界の摂理を人間のトレンド感覚で上書きしようとする行為は、長期的には湖底の景観を著しく損ねる恐れがある。我々は今一度、マリモが何のために丸くなろうとしたのか、その深淵なる起源に立ち返る必要があるだろう。球体こそが至高であり、角を作ることは死を意味する。この不毛な争いが、冬の到来によって沈静化することを願うばかりだ。

コラムニスト:藻屑・丸夫