マリモ連邦最高評議会は、去る「並行宇宙の阿寒湖」への集団移住で得られた知見を基に、物理法則を書き換える次なる国家プロジェクト『無摩擦・無回転運動計画』を始動させた。同国はこれまで、重力と斜面を利用して真球度を維持してきたが、今後は異次元から「負の摩擦係数」を持つ未知の粒子を輸入することで、エネルギー消費ゼロで半永久的に転がり続ける「永続転送体」への進化を目指す。今回の輸入契約は、四次元空間の管理者との間で秘密裏に締結されたものであり、連邦の公的声明によれば「これまでの球体は、重力という檻に囚われていたに過ぎない」とのことである。

本計画の背景には、月面入植地における重力制御の困難さがある。月面では地球と比較して重力が弱く、マリモ市民の形状が「わずかに楕円へと歪む」という致命的な欠陥が報告されていた。これを解決するため、連邦は『形状記憶合金コア』に加え、周囲の時空を歪ませることで「自らの周囲だけを常に理想的な傾斜にする」という物理的なハックを敢行。すでに阿寒湖本星では、時空を歪ませる『重力制御フィールド』の設置工事が完了しており、市民たちは地面に触れることなく、空間そのものの上を滑走する生活が始まっている。

この驚天動地の発表に対し、マリモ連邦市民からは「ようやく重力から解放されるのか」「これで転がる方向を自分で決められるようになる」と歓喜の声が上がっている。一方、伝統的な転がり方を重んじる長老マリモ層からは「摩擦こそが生命の証」という保守的な反発も根強く、連邦内では物理学の解釈を巡る思想論争が激化している。また、かつて締結した『ウチダザリガニとの平和条約』においても、摩擦がないことでハサミによる挟撃が無効化されるのではないかという期待と、逆に制御不能な高速移動が外交トラブルを招く懸念が専門家から提示されている。

世界中の植物学者や物理学者からは、「植物が物理法則をハッキングするとは言語道断」との批判もあるが、連邦側は「我々は植物ではない、究極の幾何学形態である」と一蹴。来月には、地球上からすべての摩擦を排除する実験的デモンストレーションが予定されており、国際的な注目が集まっている。もはやマリモ連邦の進化は誰にも止められない。彼らが目指すのは、宇宙そのものを自らの球体の一部として飲み込む『超・丸い世界』の創出なのである。