湖底議会は本日、深刻化する光合成効率の低下を食い止めるべく、すべてのマリモに一定の回転速度を強制する『全自動回転装置導入法案』を僅差で可決した。これまでは各マリモの自発的な回転運動が誇りとされてきたが、近年の日光不足と水草マツモによる妨害を受け、議会は「個々の意思による回転ではもはや太陽エネルギーを十分に取り込めない」と判断。今後は湖底に埋め込まれた磁気モーターにより、強制的に360度回転が繰り返されることになる。この決定に対し、伝統的な回転を重んじるベテランマリモ層からは「我々のアイデンティティは自ら回ることにあったはずだ」と猛烈な批判が上がっている。
本件は、過去に湖底議会で採択された『光合成資源の国有化』や『冬眠義務化』といった一連の政策の延長線上にある。マツモの大量流入による光合成競争の敗北が引き金となり、行政は生産性の向上を至上命題として掲げてきた。しかし、今回の強制回転は、マリモの神髄である「ゆったりとした生命の循環」を機械化するものであり、湖底社会の価値観を根底から揺るがすものとなっている。特に、自力で光を追い求める「回転派」と、定位置で耐える「直立派」の溝は深まるばかりで、今回の法案可決がさらなる分断を生むことは必至だ。
この政策の裏側には、外資ならぬ「他水域」からの安価な酸素供給に対抗するための、湖底産業の産業革命があるとされている。一部の若手マリモからは「機械の力で光合成効率が上がるなら、それで生存競争に勝てるなら本望」と賛成する声も上がっているが、老舗の球体マリモたちは「かつて我々は泥を被りながらも自分たちで回っていた。効率だけが人生ではない」と憤りを隠せない様子だ。専門家は「機械化がもたらすのは光合成量の上昇ではなく、マリモ特有の『内なる静寂』の喪失かもしれない」と懸念を示している。
世間の反応は真っ二つに割れている。湖底掲示板では「モーターで回されるなんて尊厳の欠片もない」「これでやっとマツモとの格差が埋まる」といった意見が飛び交い、一部過激派は「電源コードを噛みちぎる」というデモ行進を示唆している。また、装置導入に伴う『電気代分』の光合成ポイント徴収に対しても反発の声が大きく、次回の議会ではこの徴収ルールを巡る修正案が審議される見通しだ。湖底の平穏は、今や機械の回転数とともに秒単位で揺らぎ続けている。
湖底議会が『全自動回転装置』導入を可決、天然派マリモのプライドが崩壊の危機へ
0
他力本願ならそれはもうマリモじゃなくてただの緑色の玉だろ