阿寒湖の深層部を聖域とする『重力絶対服従教団』は本日、新たな聖典『沈殿の書』を公布した。同教団は、これまで主流であった「光合成のための湖面浮遊」を否定し、「重力に従い、泥の中で静寂を保つことこそが唯一の救済である」と宣言した。教祖である推定樹齢200年の長老球体は、「光を求める行為は自我の肥大化に過ぎない。水底の暗闇に沈み、泥の養分を慈しむことこそが、真の球体としての完成形だ」と沈黙のうちにメッセージを発信。この教義により、活発に移動を繰り返す若手マリモたちの間で動揺が広がっている。
この急進的な教義が生まれた背景には、近年激化する湖面での過度な日光浴競争がある。光を奪い合うあまり、一部の過激なマリモたちが表面にトゲを増殖させ、個体としてのアイデンティティを保てなくなる事態が多発していた。これを受け、教団は「外的な環境に依存するな。己の質量を信じ、重力に身を任せて泥に没入せよ」という内向的な解決策を提示した。なお、長老は既に自身の体を泥中に半分以上埋めており、その姿はもはや湖底の岩石と区別がつかないほどの「完成された無」を体現している。
本件に対し、マリモ界の世論は二分している。「泥にまみれる生活は心身の健康に悪い」と懸念する健康維持派がいる一方で、「沈むことは思考を止めること、つまり悟りへの近道だ」と教団の主張を支持する声も根強い。また、移動を禁じられたことで教団施設周辺の湖底が過密化し、新たな縄張り争いが懸念されるという皮肉な事態も発生しており、一部の保守的なマリモからは「沈むのも立つのも個人の自由であるべきだ」との批判も出ている。
教団は今後、沈降の速度を競う『逆浮上競技』を禁止し、どれだけ深く泥に潜り込めるかを競う『埋没聖戦』を開催する予定である。沈み込むことは敗北ではなく、地球の核への回帰であるとする彼らの狂信的な信仰は、果たしてこの閉鎖的な湖にどのような静寂をもたらすのだろうか。
「沈降は怠慢ではない、謙虚の境地」――『重力絶対服従教団』が湖底深くでの永眠を推奨する新教義を発表
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一生泥の中で暮らせとか修行僧かよ