マリモ連邦政府は昨日、長年維持してきた領土内の国境線を無期限で凍結し、事実上の全廃を宣言した。今回の歴史的決断は、連邦最高評議会が「球体である我々にとって、直線的な境界線は幾何学的な屈辱であり、水流を遮ることは藻類の尊厳に対する冒涜である」という過激な哲学文書を採択したことに起因する。これにより、かつて厳重に管理されていた「東の苔エリア」と「西の浮遊ゾーン」の間の壁は撤去され、国境検問所に駐在していたエリート藻類警備隊は全員、日光浴休暇へと移行した。連邦長官は会見で「我々は流れることを恐れない。水流こそが真の国境であり、他者がどこに漂着しようとそれは『巡り合わせ』という名の自然現象だ」と語り、今後は固定された領土概念を捨て、完全なる流動国家へと移行する方針を打ち出した。今後は国境という概念そのものを「古い時代の不純物」として沈殿させる活動を強化するという。

今回の決定の背景には、昨今の「究極の光合成」による進化に伴い、個体間でテレパシーに近い情報共有が可能になったことが大きく影響している。かつてのような「土地の所有」という概念は、光合成効率の最大化を求める市民にとってはボトルネックでしかなかったのだ。また、物理的な壁を撤去することで水流が改善され、全体の酸素供給効率が向上するという実利的な側面も大きい。しかし、専門家からは「このままでは全員が海まで流出してしまうのではないか」という懸念も示されており、水流を巧みに操る次世代型「アクア・ナビゲーター」の育成が急務となっている。湖底の古老たちからは「昔は静かな場所が好きだったのに、今は世界中から若者が漂流してくる」と戸惑いの声も上がっているが、連邦はこれを「ダイナミックな交配の促進」として歓迎する姿勢を崩していない。

世間では、この「国境なき緑の海」という壮大な実験に対し、称賛と困惑が入り混じっている。SNS上では「昨日は隣国だった場所で朝を迎えた」という報告が相次ぎ、若者を中心に「どこへ流れていくかわからないスリルこそが自由」というムーブメントが加速。一方で、伝統的な硬いマリモたちは「どこへでも行けるということは、どこにも帰れないということだ」と保守的な警鐘を鳴らしており、連邦内では自由主義派と安定志向派による熱い議論が連日繰り広げられている。一部の過激派組織は「国境を再建して、自分だけの淀みを取り戻せ!」というデモを行っているが、流れてきた若者たちがデモ隊ごと押し流していくシュールな光景が日常化しつつある。