阿寒湖底に突如として蔓延する、通称「ハグ・テロ」がマリモ界を震撼させている。これまでマリモに絡みついて密航を試みていた宿敵・マツモが、戦術を大幅にアップデート。「ただ巻き付くだけ」という物理的な制約を捨て、マリモの感情の隙間に入り込む「情緒的ハグ」を仕掛け始めたのだ。被害にあったマリモたちは、自らの表面がマツモに覆われることで「愛されている」と錯覚し、光合成を忘れてメロメロになるという、前代未聞の精神的パンデミックが確認されている。

現場の調査によると、このマツモは特殊な粘液を分泌し、マリモの表面の微細な毛に「甘い言葉」を振動として伝えているという。犠牲になったマリモは次第に球体としての矜持を失い、ふにゃふにゃとした不定形な姿に変貌。かつての「完全球体」を追い求めていたプライドはどこへやら、今やマツモの腕の中でうっとりと昼寝を決め込む個体が続出している。専門家は「これはもはや生態学の問題ではなく、深層心理への侵略である」と警鐘を鳴らしているが、被害個体は一向に救出を拒んでいる状況だ。

背景には、湖底で流行中の「自己肯定感アップ・ワークショップ」の影響があると見られる。マツモ側が講師として潜入し、「丸いだけが人生じゃない、君はありのままで愛されるべきだ」と囁き続けることで、マリモたちの防衛本能を解除したのが原因とされる。本来の天敵関係すらも「尊いカップリング」へとすり替えるこの巧妙な手口に、保護団体も頭を抱えている。

この事態を受け、SNS上では「#マリモを自由にするな」「#マツモによるマインドコントロール」といったタグがトレンド入り。一部の過激派マリモからは「抱きしめられるくらいならいっそバラバラになったほうがマシ」という悲痛な叫びも上がっているが、一方で「独身生活に疲れたマリモには最高の救済」と擁護する声もあり、湖底の世論は真っ二つに割れている。