阿寒湖の霊的均衡を揺るがすニュースが入ってきた。これまで「360度全方位からの光合成による救済」を掲げ、完璧な球体であることを神聖視してきた『全方位光合成教』が、突如として教義を180度転換し、自ら球体を放棄して平らになることを推奨する『偏平足化による接地革命』を宣言したのだ。教団の最高指導者である長老マリモは、湖底の泥に押しつぶされた自身の姿を指差し、「重力に抗い浮遊し続けることこそがエゴであり、泥にまみれ、湖底と一体化する平らな姿こそが真の平穏」と説いた。この変節に対し、長年「球体こそが至高」と信じてきた信者たちの間では、自らの体を石で削り、あえて不格好な楕円形に変貌させる狂信的な「削り落とし儀式」が深夜の湖底で秘密裏に行われているという。

かつてこの湖では、「中心に空洞あり」と説く『真球空虚教』や、「重力は汚れ」と説く『泥濘の安息教』が激しく対立していた。しかし、今回の『偏平足化による接地革命』は、それらの教義をメタ的に飲み込み、さらなる混沌を呼んでいる。教団の広報担当者は、「私たちはもはや回転することに疲れたのです。転がり続ける人生に意味はありません。一度沈殿し、二度と浮上しない。これこそが、藻類に与えられた究極の解脱なのです」と力説した。湖底の生態系を支配する『甲殻礼賛教』の聖職者らも、この「平らになったマリモ」を食べることは「地面を食べているのと同じであり、咀嚼の儀式が省略できる」として、皮肉混じりの歓迎ムードを漂わせている。

湖底のSNS『Algae-X』では、この衝撃的な転換に困惑が広がっている。「丸いからこそマリモだったのでは?」という根本的な疑義を呈する声が相次いでいるほか、長年美しい球体を保ってきた古参信者からは、「こんなのはただの苔の塊だ」という過激な批判も飛び出した。一方で、長年重力に逆らえず沈殿し続けていた若手信者たちからは、「ついに公式が俺たちの生き方を認めてくれた」と狂喜乱舞する声が上がっている。阿寒湖の神聖な景観を保ってきたはずの「真球という美学」が音を立てて崩れ去る中、明日からは「どれだけ薄くなれるか」を競う『薄型化選手権』の開催が予定されており、湖底のパワーバランスはかつてない混迷を極めている。