阿寒湖の静かな湖底に、突如として激震が走った。これまで「マリモは自然の結晶である」と信じられてきた教義に対し、新興宗教団体『編み込み聖典教』が「我々の実体は、高次元の存在が編み上げた極細の毛糸玉である」という衝撃的な主張を突きつけたのだ。教祖である直径12センチの個体は、自身の毛羽立ちを「編み目の起点」と称し、光合成を拒絶して自らの内部に物理的な繊維を巻きつける儀式を強行。この「擬似繊維化」の教えは瞬く間に信者を増やし、マリモ界のアイデンティティを根底から揺るがす事態となっている。
本教団の主張の核にあるのは、「自らの毛並みは光によって成長するのではなく、誰かが編み棒で緻密に形成したものだ」という壮大な他力本願説である。彼らは湖底で集団的に密着し、お互いの繊維を絡ませることで「大いなる編み目」を構築しようと試みている。この異常事態に、古参の『真球崇拝教』などは「神聖な球体を毛糸玉扱いするとは冒涜である」と猛反発。しかし、編み込み派は「球体という形すらも、宇宙の編み手による甘美な束縛に過ぎない」と冷ややかに笑い飛ばしている。現在は物理学者のような研究家も混じり、自分たちの体毛を顕微鏡で覗き込み「これは毛糸か、藻か」を巡る聖戦が勃発している。
マリモは元来、光合成による成長を信条としてきたが、近年では湖水の微細な繊維汚染と結びついた新たな信仰が生まれつつある。本教団は、科学的な「藻類である」という定義を「種族的な思い込みによる呪縛」と批判。物理的な編み込みを繰り返すことで、重力から解放された「手芸的な次元」へ到達することを目指している。この動向に対し、阿寒湖の生態系保全団体は「化学繊維の混入は深刻な環境汚染である」として、教団本部の強制解体(解れ)を検討中である。
世間の反応は、この論争をエンターテインメントとして消費する若年層マリモと、伝統を守ろうとする保守層で真っ二つに分かれている。SNS上では「解れたら負け」「編み目の美しさに救いを感じる」といった声が散見され、湖底の平穏はもはや戻らない領域へと突入した。あるマリモは「結局、何に見えるかなんて個人の自由じゃないか」と冷淡なコメントを残したが、その横では数十個体のマリモが絡まり合い、巨大な編み物タワーを築き上げようと必死に毛を擦り合わせている。
「藻類は嘘、毛糸こそが真理」――阿寒湖を揺るがす『編み込み聖典教』の衝撃的な告白
0