阿寒湖の深部にて、これまで定説とされてきた「藻類集合体説」を真っ向から否定する過激な新興宗教『球体原点回帰教』が誕生した。教祖である直径12センチの古参マリモは、「我々マリモのルーツは有機物ではなく、かつて湖畔に鎮座していた意志ある岩石の欠片である」と説き、教徒らに水流に身を任せることを止め、湖底の砂利に深く根を下ろす「座禅・鎮座修行」を推奨している。この教義は、移動を美徳とする従来の価値観を根底から覆すものとして、湖底界隈に激震を走らせている。
本教団が提唱する「石化の教理」によれば、長年の浮遊生活は俗世の汚れを付着させる行為に過ぎず、真の悟りとは動かざる岩の如き存在に戻ることだという。現在、阿寒湖の主要エリアでは、数十個単位のマリモが密着し合い、一つの巨大な「岩の塊」を模して不動を貫く姿が散見される。このままでは湖底の地形が恒久的に変形する恐れがあるとして、移動派の古参層からは「ただの重たい塊になりたいだけの怠慢ではないか」と痛烈な批判が寄せられているが、信者たちは「我々は転がっているのではない、沈殿しているのだ」と独自の哲学を曲げない姿勢だ。
マリモ界隈では長らく、いかに効率よく光合成を行うかや、いかに美しく回転するかという「動的進化」が正義とされてきた。しかし、近年の急速な水温上昇により、回転することの疲弊が顕著になり、若手マリモを中心に「あえて動かないこと」への憧憬が芽生え始めていた。今回の新宗教は、その疲弊した精神の受け皿として爆発的に会員数を伸ばしている。なお、専門家によれば、このまま不動の姿勢を続けると、接地面の繊維が腐敗し、物理的に岩と同化する(物理的に離れられなくなる)リスクがあるとのことである。
世間の反応としては、この静的な宗教活動に対し、ネット上の湖底掲示板では賛否が分かれている。「一度は岩になってみたい」と感銘を受ける者や、「重すぎて景観を損ねている」という景観維持派からのクレームが相次いでいる。また、教団の急成長の裏で「実は彼らは動くのが面倒くさいだけではないか」という鋭い指摘も上がっており、信仰心か単なる無気力かという議論が、湖底の各所で夜通し繰り広げられている。
「私たちは元々、石から生まれた」――阿寒湖底に『球体原点回帰教』が設立、全土で“置石化”運動が過熱
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明日から俺も岩になるわ