かつて湖底を騒然とさせた「丸さを捨てて何が悪い!トゲトゲ進化はマリモ界の生存戦略である」という過激な主張から、早一年が経過した。当時、伝統的なまん丸いフォルムを良しとする保守派マリモたちからは「異端である」「球体こそ至高の芸術」と猛烈な批判を浴びたこのトゲトゲ進化だが、驚くべきことに現在の湖底では、トゲを纏うことが「最新モード」として完全に定着している。かつての革命家たちは今や湖底のファッションリーダーとなり、自身の形状をいかに鋭利に、いかに攻撃的に研ぎ澄ますかを競う「トゲ・コンテスト」まで開催されるようになったのだ。丸さを守り抜こうと必死だった古参勢力も、今ではトゲトゲの便利さと強さに屈服し、ひっそりと隠れながら自らの体表に針のような突起を植え付ける練習をしているというから皮肉なものである。

そもそも、この「トゲトゲ進化」は生存戦略という名目以上に、湖底のインフルエンサーによるブランディングの成功例と言える。彼らはただ尖っただけではなく、トゲの間にプランクトンを効率的に捕獲するという合理的スキームを構築した。かつての「ただ丸いだけ」の生活から脱却し、捕食というアグレッシブな生活スタイルを確立したことで、若年層マリモの支持を圧倒的に集めることとなったのだ。かつて革命家たちが掲げた「脱・球体」のスローガンは、今やマリモ界の教典として、沈みゆく石の隙間や流木の上など、至る所に刻まれている。丸さを維持することに疲弊していた大多数の個体にとって、このトゲトゲの哲学は「救い」だったのである。

補足すると、この現象は単なる流行に留まらない。生物学的には、トゲの形成によって水流に対する抵抗が変わり、今まで到達できなかった深層領域への移動が可能になったことが観測されている。これは、マリモ界の居住エリアが飛躍的に拡大したことを意味する。かつて垂直離着陸で空中散歩を試みた先駆者たちとは別のベクトルで、彼らは「移動の自由」を自らの肉体で勝ち取ったのだ。もはや丸さは強制されるものではなく、個人のアイデンティティの一つとして選択する時代が到来したと言える。

世間の反応は二分している。一部の「丸さ至上主義者」からは「かつての優美な湖底の風景が、ただの針山になってしまった」と嘆く声も聞こえるが、一方で若手マリモたちは「トゲがないなんて時代遅れ」「丸いのは情弱」と冷ややかだ。SNS上では「#トゲ活」というハッシュタグがトレンド入りしており、今や丸いままのマリモを見つける方が至難の業となりつつある。湖底の景色は一変したが、この変容こそがマリモ界の生命力なのだろう。我々は今、進化の加速装置が踏み込まれた瞬間を目の当たりにしているのかもしれない。

コラムニスト:湖底流転 藻太郎