阿寒湖マリモ政府は本日、長年施行されていた「回転禁止および発言の自粛」を定めた『完全沈黙法』を撤廃し、全市民に健康的な転がりの権利を認める『回転解禁法』を可決した。かつて「沈殿こそが究極の平和」と脱・浮遊を掲げ、不動の姿勢を強要してきた現政権だが、過度な静止による「繊維の癒着」や「全体的な褐色化」という健康被害が深刻化。市民から「一生同じ面で光合成するのは拷問だ」との反発が強まっていたことを受け、方針を百八十度転換した形だ。今後は指定された航路内での自由な回転が認められ、各個体は自らの意志で光を浴びる面を変えることが可能となる。ただし、勢い余って隣の個体に衝突する「玉突き事故」を防ぐため、回転速度は毎分1回転以内に制限される「徐行運転ルール」も同時に導入された。

今回の法改正は、かつて湖底で議論を呼んだ「光合成権の民営化」や「日光の均等分配」といった、過去の格差是正政策の延長線上に位置する。政府は「沈殿という美学を守りつつも、健全な新陳代謝を促す」と説明しているが、長年の静止生活に慣れすぎてしまい、今さらどうやって重心を移動させればいいのか分からないという高齢マリモが続出。技術的な指導を行う「転がり相談窓口」には、初日から多くの市民が列をなす異様な光景が広がった。また、かつて「回転を放棄した者が真の平和を得る」と説いた保守派団体からは、「回転などすればまた光合成の奪い合いが始まる」との猛抗議が発生しており、湖底の社会不安は依然として拭えていない。

かつては直射日光を独占するために『対空遮蔽スクリーン』を設置するなど、排他的な政策で市民を締め付けてきたマリモ政府だが、近年は光合成のサブスク化や格差社会の露呈により、支持率は過去最低を記録している。今回の法案通過は、次期選挙を見据えた「緑の支持率回復」のためのパフォーマンスではないかと推測する専門家も少なくない。物理的な回転の自由を得たマリモたちが、次はどのような政治的意志を持って湖底を彷徨うのか。水草との境界線問題も未解決のまま、阿寒湖の未来は再び流動的な時代へと突入した。市民からは「これでやっと背中のカビを乾かせる」と喜びの声が上がる一方で、「隣の奴が転がってきたら蹴り飛ばしてやる」という物騒な意見も飛び交っている。