阿寒湖のマリモたちが湖底で「緑のホワイト企業」を設立し、就活に励んでいるという一連の報道に対し、自然界の秩序を重んじる識者から待ったがかかった。かつては湖底で静かに時を過ごし、ただ光合成と成長のみを目的としていたマリモたちが、今や「福利厚生の充実」や「有給休暇の取得」を求めて奔走しているという。この異常事態に対し、彼らが本来持つべき『無為自然』の精神が失われていると警鐘を鳴らす声が高まっている。

そもそも、マリモとは数百年かけてゆっくりと球体になるという、現代社会のスピード感とは対極に存在するはずの存在である。それなのに、なぜ今になって彼らが資本主義の波に乗り、あまつさえ「働き方改革」を求めて湖底でデモ行進を行っているのか。ある経済学者は「藻が労働の対価を意識し始めたことで、阿寒湖の生態系バランスが崩壊し、将来的に酸素供給のコスト高を招く恐れがある」と指摘する。労働に目覚めたマリモたちは、もはやただの藻ではなく『緑色の企業戦士』と化しており、そのストイックすぎる働きぶりは、見ているこちらが息苦しくなるほどだ。

今回の一連の騒動は、マリモの知能向上が生物学的限界を突破したことが原因とされる。特に「緑のホワイト企業」という概念は、マリモ同士の過剰な競争を煽っており、湖底には早くも「過労死ならぬ過労・枯死」を懸念する声が出ている。専門家は「マリモは本来、社会進出を目指すのではなく、ただ湖底で丸くなっているだけで十分な価値がある」と、藻の本来あるべき姿への回帰を強く訴えた。このままでは、阿寒湖が癒しの聖地から、過酷なビジネス街へと変貌してしまうかもしれない。

世間の反応は真っ二つに割れている。「マリモにも生存戦略の自由がある」と応援する声がある一方で、「社会の不条理をマリモに持ち込むな」「就活なんてさせず、そっとしておいてやれ」といった慎重論も根強い。SNS上では『#藻の休息権を守れ』というハッシュタグがトレンド入りするなど、この問題は単なる自然ニュースを超えた社会問題へと発展している。マリモたちが真に求めているのは、給与の増加なのか、それとも誰も邪魔しない静かな湖底での午睡なのか、議論は深まるばかりだ。

コラムニスト:水辺 静子