阿寒湖の至宝、マリモ界のプロゲーマー・毬藻田(まりもだ)氏が、対戦格闘ゲーム『藻林檎』において、全キャラクターを球体へと強制変換するという前代未聞の事態を引き起こした。従来の格闘ゲームにおける「手足のリーチ」という概念を根底から覆し、全キャラクターの当たり判定を完璧な円形へと書き換えたこの所業。運営側は即座に規約改定に乗り出したが、マリモ勢の間では「これこそが真の公平」「角がない世界こそが平和の象徴」と賞賛の声が上がっている。もはや格闘ゲームというジャンルを超越し、転がる球体同士が物理演算でいかにして相手を画面外へ弾き飛ばすかという、究極の『ビリヤード型対戦』へと昇華された瞬間だった。

本来、格闘ゲームとはキャラクターのシルエットや技の構成が重要なゲームである。しかし、毬藻田氏の魔改造により、キャラ選択画面は無数の緑色の球体が並ぶ「阿寒湖の湖底」と化した。この事件の背景には、昨今のゲーム界で加速する「最適解の追求」がある。手足があるから攻撃を受け、隙が生まれる。ならば最初から手足を排除し、完璧な幾何学形状である『球体』になれば、あらゆる攻撃は斜めに逸らされ、無敵の守備力を得られるという極論に到達したのだ。開発側は「キャラクターの個性を守るため」と息巻くが、もはや円環の理に達した球体たちの前では、ポリゴンの枠組みなど無力に等しいといえるだろう。

かつて、マリモのプロゲーマーたちは『藻ーダン・ウォーフェア』で草むらと同化し、『石ころの箱庭』で小惑星へと進化を遂げてきた。今回の騒動は、彼らが「キャラクター」という二次元の虚像に縛られることを拒否し、自らのアイデンティティである「球体」を環境そのものに適用させようとする進化の系譜の最新形態だ。ゲームのソースコードすら光合成の一部と化す彼らの猛攻に、果たして運営がどこまで抗えるのか。球体同士がぶつかり合い、ただ転がるだけの試合映像がストリーミングサイトを埋め尽くす未来は、すぐそこまで迫っているのかもしれない。

世間の反応としては、マリモ界隈から「これぞ球体の勝利!」「角があるやつは負け犬」といった熱狂的な歓迎の声がある一方で、一般ゲーマーからは「もう何がどうなっているのか分からない」「ボールが跳ね回るだけで、どのキャラが操作キャラなのか判別不能」と困惑が広がっている。しかし、一度球体の心地よさを知ったプレイヤーは、二度と手足のあるキャラクターには戻れないという禁断症状を訴えているほどだ。この事件は、eスポーツの定義を「ボタン入力の精度」から「どれだけ効率よく環境を丸くできるか」に変えてしまった革命といえるだろう。

(コラムニスト:水草 伸太郎)