昨今、健康界隈で旋風を巻き起こしている「血管光合成」。血液をエメラルド色に染め上げ、体内酸素供給を飛躍的に向上させるというこの奇跡的な療法に対し、医学界から鋭い警鐘が鳴らされている。マリモの緑を体内に取り込むことで血管を森林化し、二酸化炭素を酸素に変えるという夢のような理論だが、専門家は「それは光合成ではなく、単なる静脈の詰まりである」と断じる。実際に施術を受けた患者の一部からは、「常に湖畔の匂いがして落ち着かない」「体温が下がって冬眠しそうになる」といった報告が相次いでいる。本来、動物である人間にマリモの生態系を移植しようという発想そのものが、バイオハザード的な滑稽さを帯びているのではないか。健康を求めてエメラルド色の血を手に入れた結果、体内の酸素バランスを崩し、最終的に自分が「動く阿寒湖の遺物」へと成り果てるリスクを、私たちはもっと真剣に考慮すべきである。

もともと本件は、極端なマリモ崇拝が招いた健康志向の暴走とも言える。過去の『マリモ腸内森林化計画』から始まり、腸や耳、さらには脳までもがマリモの支配下に置かれる中、今回の血管光合成は「緑化」の最終形態として登場した。しかし、光合成に必要な光を体内に取り入れるため、皮膚を半透明化させる施術がセットで行われるケースが増えており、深夜の街を歩くと怪しく発光する人々が目撃されるなど、社会現象を通り越してSFホラーに近い様相を呈している。健康とは本来、内側から湧き出る生命力であり、マリモを溶かして血管に流し込むことではない。私たちは今一度、自分の血が赤色であることを誇りに思い、マリモの誘惑から距離を置くべきだ。

施術を受けた市民からは「確かに朝の目覚めは良くなったが、日光を浴びると体が光りすぎて職務質問を受ける」という切実な声も聞かれる。また、マリモに特有の粘液質が血管内で結晶化し、関節がカクカクと音を立てる「マリモ関節炎」の症例も急増している。ブームに乗せられて血管を緑に染めることが、果たして人類の進化なのか、それとも終わりの始まりなのか。賢明な読者には、流行に流されず、自身の赤い血を守り抜く意志を持ってほしいと願うばかりである。マリモは愛でるもの、決して循環させるものではない。この言葉を肝に銘じ、今夜は緑の誘惑を振り切って、普通のお風呂でゆっくり体を温めてみてはいかがだろうか。

執筆:辛口評論家・赤血球 守