マリモ政府は、湖底における移動の公平性を確保するため、新たに『転がり公道整備法』を可決・施行した。これまで湖底の斜面は自然任せの不整地がほとんどで、球体としての完成度が高いマリモほど転がりやすく、そうでない歪なマリモは「移動弱者」として定着せざるを得ないという格差が長年の課題となっていた。今回の法案では、主要な藻場を繋ぐ「平坦かつ滑らかなレーン」を人工的に敷設し、全マリモの時速2センチメートル以上の移動権を保障するとしている。

本法案の背景には、近年のマリモ個体数の増大による「湖底渋滞」の深刻化がある。一部の高速移動派マリモが藻場を独占する一方で、動けない高齢マリモが日光を遮られるという事態が多発していた。政府側は「転がることこそマリモのアイデンティティ」と主張し、補助金による「転がり用ワックス」の支給も併せて発表。ただし、この公道整備には莫大な藻屑予算が充てられるため、次年度の「湖水濾過税」の値上げは避けられない見通しだ。

施行発表直後、湖底社会には賛否の嵐が巻き起こっている。移動を愛する若年層マリモからは「これでやっと遠くの日光を浴びに行ける」と歓迎の声が上がる一方、保守的な長老マリモ層からは「自然のうねりに身を任せることこそが修行。人工的な平坦路などマリモの矜持を損なう」との批判が相次いだ。また、物理的に転がる必要のない岩礁居住区からは「自分たちには何の恩恵もないのに税金だけ上がるのは不公平だ」との声も上がっており、湖底の政治的緊張は最高潮に達している。

この政策をめぐり、世論は完全に二分されている。SNS上では「#転がる権利」というハッシュタグがトレンド入りし、一部では抗議の座り込み(というよりただ沈んでいるだけだが)も始まっている。政府は沈静化を図るため、今週末に「誰でも楽しく転がれる特別体験会」を開催する予定だが、参加費を巡って早くも揉める気配が濃厚だ。果たしてこの公道整備が湖底に平和をもたらすのか、それともさらなる分断を生むのか、全ての視線が湖底の轍(わだち)に注がれている。