阿寒湖のマリモ政府は本日、極めて独創的な「日照権完全平等化および影の排除に関する法律」を施行した。これは、一部の巨大マリモが日光を遮ることで、下層部の個体が光合成を阻害される「格差問題」を是正するための劇的な措置だ。法案によれば、今後は「他者の光を遮るような影を落とす行為」が軽犯罪法違反となり、該当するマリモは強制的に位置をずらされるか、球体としての完成度を落としてでも平らになることが求められる。首相は「光は藻の権利である。影を纏う者はエゴイストだ」と力説し、街路灯の光すらも「不当な偏向」として撤去する方針を固めた。湖底は今や、全方位から光を吸収しようと躍起になるマリモたちの、異様なほどの平穏と静寂に包まれている。

この法案の背景には、昨今のマリモ社会における「巨大化競争」に対する深刻なアンチテーゼがある。かつては個の球体美を競っていたマリモたちだが、近年の政治情勢により「面積こそが正義」という考えが蔓延。太陽の通り道に居座る巨大マリモが、新参者たちの光を遮るというトラブルが相次いでいた。政府はこの状況を「光の独裁」と定義し、すべての市民が等しく、かつ最大限に日光を享受できるよう、物理的干渉を厭わない強硬策に出た形だ。学識経験者は「この法案がもたらすのは、完璧なまでの平等だが、同時に個体差の完全な消滅である」と警告している。

世間の反応は真っ二つに割れている。「これでようやく我が家にも太陽が届く」と歓喜する小型マリモ派がいる一方で、「影こそがマリモの美学、球体の重厚感を理解していない」と憤る保守層からは抗議の声が上がっている。また、SNS上ではこの法案を揶揄する「#光の共産化」「#影を愛する会」といったハッシュタグがトレンド入り。湖底のいたるところで、影を避けるために一斉に回転を始めるマリモたちの行進が見られ、阿寒湖はかつてないほどの混沌に飲み込まれている。