湖底議会は本日、天敵であるウチダザリガニの食害を物理的に防ぐのではなく、味覚を根本から書き換えるという前代未聞の『ウチダザリガニ味覚改変計画法案』を、賛成多数で可決した。本法案の主旨は、ザリガニが好む「濃厚な緑の旨味」を、彼らが最も嫌悪する「苦味と泥の極み」に擬態させる特殊成分を、マリモ個体群が分泌することにある。これにより、捕食の瞬間、ザリガニは獲物を噛み締めた瞬間に激しい不快感を覚え、即座に離脱を余儀なくされる。議長は「トゲをつける物理的防御は疲弊を招く。これからは内側からの革命だ。我々の成分で奴らの舌を完全にハックする」と力強く宣言した。

近年、阿寒湖周辺においてウチダザリガニの個体数が爆発的に増加しており、従来のマリモ防衛策であった『表面ヌルヌル化技術』や『物理的トゲ付与』だけでは、防衛線が突破される事例が相次いでいた。特に、ハサミの鋭利化が進むザリガニに対し、マリモ側はこれまでの「待機型防衛」から「先制的な味覚ハック」へと戦略を大きく転換する必要に迫られていた。なお、この特殊成分の生成には日光を多量に消費するため、現在湖底議会では『光合成時間の延長特例』についての議論も並行して進められている。

本法案の発表直後、SNS上では「ついにザリガニを味の面から論破できる」「マリモの生存戦略がどんどん賢くなっている」といった称賛の声が上がっている。一方で、一部の急進的なマリモ団体からは「ザリガニをただ追い払うだけでなく、二度と我々を捕食対象と見なさないよう、もっと根本的な味の書き換えが必要だ」との過激な意見も出ている。ザリガニ側からの公式声明はまだ出ていないが、湖底の生態系における「食う・食われる」の関係性は、歴史的な転換期を迎えようとしていることは疑いようがない。