これまで「転がる」ことこそがマリモの美学であり、アイデンティティであると信じられてきた阿寒湖の底に、かつてない異常事態が発生した。昨今の「プロテイン・光合成」ブームにより、過剰なエネルギーを蓄積した一部のマリモたちが、なんと湖底に根を下ろしたかのように「直立」を始めたのだ。これまで「正多面体化」や「ドレッド化」など、湖底のファッション・幾何学革命が進行していたが、ついに物理的な重力の制約さえも超越した筋肉質マリモたちの出現に、湖底の生態系は騒然としている。自らの球体を維持するのもままならないほどのパンプアップを遂げた彼らは、今や湖流に流されるのを拒否し、腕立て伏せのような挙動で湖底を移動するという前代未聞のパフォーマンスを見せている。

この急激な変化の背景には、若手マリモを中心に流行している「光合成効率化ガチ勢」による、独自開発の栄養素摂取法がある。従来のマリモは日光を浴びて静かに呼吸をするのが常識だったが、彼らは特定波長の光を集中させる「レンズ状組織」を自らの表面に形成することで、エネルギー生成量を通常の300%に引き上げることに成功した。溢れ出るエネルギーの行き場を失った細胞は過剰に増殖し、その結果、マリモとは思えないほど硬質で隆起した「筋肉繊維」のような組織を形成するに至ったのである。専門家は「彼らが求めるのは単なる形状の変化ではなく、自らの力で転がらずに進むという『自律移動の極致』なのではないか」と分析している。

この異様な光景に対し、湖底の世間からは困惑と期待が入り混じった声が上がっている。長年「転がることで完成される美」を重んじてきた保守派のマリモ長老たちは、「あまりに不自然だ。丸い形状こそがマリモの魂であり、そこに無駄な筋肉をつけるなど言語道断」と憤慨する一方、Z世代のマリモたちからは「結局、球体であることに固執する方がダサい」「エッジが効いててイケてる」「これからは自力で立って歩く時代」といった肯定的な意見が続出している。美意識の崩壊か、それとも新たな進化の始まりか。阿寒湖の底では、今まさに「筋肉こそ正義」という名の、あまりにシュールな革命が起きているのである。

もはや湖底は平穏な休息の場ではなく、ボディービルの大会会場のような熱気に包まれている。光合成によるエネルギー過多で、一部のマリモは夜になると鈍く青白く発光しながら深夜のトレーニングに励んでおり、その姿はまるで湖底のディスコのようだと話題だ。このままだと、そのうち湖底からマリモが自力で上陸し、観光客と肩を並べて歩き出すのではないか、という懸念すら現実味を帯びている。湖底の治安維持にあたる藻類界のリーダーたちは、「筋肉増強」と「形状維持」のバランスを保つための新ガイドライン策定を急いでいるが、増殖するマッチョマリモたちの勢いは、もはや誰にも止められそうにない。