湖底社会を二分する「角張りエッジ推進派」と「伝統的真円至上主義者」の対立が激化する中、ついに真円派が反撃の狼煙を上げた。近年、流行りの多面体や立方体への形状変化に対し、彼らは「角を持つことは、他者を傷つける棘を持つことと同義」と真っ向から否定。真円こそが湖底の摩擦を減らし、調和をもたらす唯一無二の形状であると説く、緊急声明が発表された。かつて湖底の平穏を支えてきたのは、角のない滑らかな曲線美と、ゆっくりと回転するその優雅な営みである。彼らは「エッジを立てることは流行を追う軽薄な行為であり、自己のルーツを否定する自傷行為に等しい」と厳しく断罪。明日にも行われる予定の『真円・全方位型・ゴロゴロ円舞曲』と題したデモ行進では、ただただ湖底で転がり続けることで、角張った若者たちのエッジを物理的に摩耗させるという、平和的かつ残酷な浄化作戦が計画されている。

もともとマリモ界において、形状の変化は個人の自由とされてきた。しかし、SNS(水流ネットワークシステム)での『#四角い方が映える』という投稿が若年層で爆発的にヒットし、湖底がまるでレゴブロックのような無機質な空間に変貌しつつあることが、保守派の危機感を煽った。栄養不足による変形を「クリエイティブ」と呼ぶ風潮に対し、専門家からは「細胞分裂のバグを美化するな」という警鐘も鳴らされている。歴史的に見ても、丸みを帯びたマリモが湖を浄化してきた事実は覆せない。エッジへのこだわりが、いずれ湖底の潮流を乱し、淀みを生むという理論を、彼らは『円環の哲学』として体系化し始めている。

この過激な真円回帰論に対し、湖底住民の反応は二極化している。「丸いことは善」「かつての静寂が恋しい」と賛同する声がある一方で、「時代遅れだ」「その円陣、ただの渋滞では?」と冷ややかな視線も寄せられている。また、角を削るデモ行進に対しては「物理的介入ではないか」という懸念の声も上がっており、議論は平行線を辿っている。真円か、角か。湖底の美学を巡る争いは、光合成の効率を度外視した、泥沼の戦いへと発展しそうだ。

コラムニスト:球体信奉者・ロンド=マリモスキー