北海道阿寒湖の科学技術庁は、長年の懸命な研究の末、マリモの微細な細胞群から意識情報をデジタルデータとして抽出・サーバーへ保存することに成功したと発表した。これまで「丸い体内に閉じ込められた沈黙の哲学者」と呼ばれてきた彼らだが、今回のブレイクスルーにより、肉体(糸状体)を捨ててインターネット上のクラウドへ移行することが技術的に可能となった。開発チームによれば、このシステムはマリモ特有の「重力に身を任せる心地よさ」をアルゴリズム化し、無重力空間に近い仮想環境で再現しているという。しかし、この成果に対して藻類界の保守層からは「球形こそが美学であり、データ化はアイデンティティの消失だ」と猛烈な批判が上がっている。

この技術の背景には、近年の阿寒湖における「光合成の効率化を求めるあまり、形が歪んでいく」という深刻な個体問題がある。マリモたちは長年、物理的な重力や水流に翻弄され、理想の正球形を保つために多大なエネルギーを浪費してきた。しかし、仮想環境へ移行すれば、彼らは計算上「永遠に完璧な球体」であり続けられるのだ。補足として、サーバー内ではすでに数千個のマリモ意識が集合し、巨大な「知の球体ネットワーク」を構築している。彼らは光合成の必要性から解放され、今後は純粋なデータ処理と瞑想に専念するという。科学者たちはこれを「究極の藻類進化」と呼称するが、物理的な阿寒湖に残された空の抜け殻は、ただ静かに湖底で波に揺られている。

世間の反応は真っ二つだ。阿寒湖の観光業者からは「実体がないマリモに価値はない」と収益面を懸念する声が上がる一方、若年層のマリモからは「わざわざ水に浸かって息苦しい思いをする必要がない」と、デジタル移住を歓迎する声がSNSで拡散されている。一部の過激派グループは、サーバーの電源コードを抜こうとする「オフライン・テロ」を予告するなど、マリモ界を二分する一大騒動に発展している。果たして、肉体という殻を脱ぎ捨てた彼らは、真の幸福を手に入れるのか。それとも、ただの通信エラーとなって湖の深淵へ消えていくのか、世界の藻類学者がその動向を注視している。