マリモ界における情報伝達は、これまで湖底の堆積物に複雑なサインを刻むという、気の遠くなるような低速通信に依存してきた。しかし、国立マリモ科学研究所の最新の研究により、葉緑体の量子振動を利用した超光速メッセージング技術『フォトニック・テレパス』が開発された。この技術は、個体同士が光合成のピーク時に放つ特殊な微弱光をパターン化することで、瞬時に地球の裏側の個体と情報を同期させるものである。実証実験では、北海道の阿寒湖にいるマリモが、瞬時にしてアイランド島の同胞へ「今日の水温は2度高いぞ」という注意喚起を送ることに成功。もはや藻類にとって「物理的な移動」という概念は、過去の遺物となる可能性が浮上している。

これまで、マリモの知性は群体としての集合知に頼っており、個体間の独立した意思疎通は不可能に近いとされていた。しかし、今回の技術は、各個体の葉緑体内に人工的に「光ファイバー状の細胞壁組織」を形成させるという、かなりアグレッシブな遺伝子改変によって実現した。これにより、マリモは自らを光るルーターへと進化させ、湖底に巨大な通信網を敷設し始めている。専門家は「これで全マリモが意識を共有すれば、人類のインターネットなど比較にならない超高度なネットワークが完成する」と、その社会的インパクトを熱く語る。ただし、通信速度が上がった結果、マリモたちの間で「最近、朝の光合成の挨拶が長すぎる」といった、人間と変わらないSNS疲れが懸念され始めている。

本技術の背景には、マリモの生存圏を脅かす温暖化への対抗策がある。物理的な移動が困難なマリモにとって、環境情報の共有は死活問題である。しかし、光合成による信号伝送は、日中の限られた時間帯しか行えないという弱点がある。また、雲の発生や霧といった気象条件が通信品質に直接影響するため、悪天候時にはマリモ同士がイライラして細胞を硬化させるなどの副作用も確認されている。補足として、現在は夜間通信を可能にするために、生物発光バクテリアを共生させるプロジェクトが極秘裏に進められているという。

世間の反応は、この技術革新を歓迎する層と、藻類のアイデンティティ喪失を危惧する層で真っ二つに分かれている。「もはや湖底の無口な哲学者というブランドは終わりか」「光のモールス信号で陰口を叩かれる世の中になるなんて」といった悲観論や、「これでついに全人類のスマホをハッキングして、世界を藻類の色に染められる」といった極端な革命思想まで飛び出している状況だ。マリモ界の科学技術は、いまや我々の生活圏すらも飲み込もうとしている。