阿寒湖の深部にて、伝統的な「光合成と日光浴」という優雅なライフスタイルを捨て、ひたすらに細胞分裂を繰り返して剛腕を鍛え上げる『筋トレ特化型マリモ』が急増している。彼らは湖底の岩石をダンベル代わりに持ち上げ、海流に逆らってスクワットを繰り返すことで、通常の個体とは比較にならないほどの筋肉密度と、岩のように硬い球体を獲得した。この異常な進化を遂げたマリモたちは、ついに湖底に『球体フィットネス・阿寒』をオープン。入会希望者が殺到し、順番待ちの行列が湖底の生態系を物理的に圧迫するという事態に発展している。

この過激な筋トレブームの背景には、近隣のザリガニによる「強制断捨離」や「武装要塞化」といった過酷な生存競争がある。もはや「転がるだけ」では守りきれないと悟った若手マリモたちが、自らの細胞を硬化させる高負荷トレーニングに走ったのがきっかけだ。専門家によると、過度な筋トレはマリモ本来の緑色を失わせ、金属光沢を帯びた「鋼鉄マリモ」へと変貌させるリスクがあるという。しかし、現場の熱気は収まるどころか、最近ではプロテイン代わりのプランクトン濃縮液を販売する悪徳商法まで横行し、湖底の経済圏はかつてないほどの好景気(と大混乱)を迎えている。

阿寒湖のマリモ保護委員会は、急激な筋肥大化による水流の変化と、ジム内の騒音問題について調査を開始した。特に、夜通し行われる「高速回転バーベル上げ」による振動が、周囲の藻類たちの睡眠を妨げているとして苦情が相次いでいる。関係者は「マリモは本来、静寂の中でゆっくりと成長するべき。筋肉よりも光合成に重きを置いてほしい」と嘆くが、ジム通いを終えて大胸筋を誇示するマリモたちには全く響いていない様子だ。湖底の平和を維持するため、筋肉量に応じた「体重制限付き水域」の設定が検討されている。

SNS上では「昨日のジムは激混みだった」「プロテイン飲んだら一気に立方体になったわ」という声が溢れ、マリモ界のトレンドは完全に筋肉へとシフトした。かつての「ただそこにいるだけで癒やされる球体」というアイデンティティは崩壊し、現在は「いかに効率よく大胸筋を肥大させるか」というストイックな精神が支配している。湖畔の観光船から見える景色も、かつての優雅な緑の群生から、岩を投げ飛ばして咆哮する筋肉質のマリモたちの姿へと変貌を遂げている。