阿寒湖科学技術振興センターは、マリモが自身の体を伸ばして水中の栄養素を器用に掬い取る『自己摂食型アクティブ・テイル』の研究成果を発表した。従来、マリモは環境中の栄養を拡散吸収する受動的な生存戦略を採ってきたが、今回の新技術では、微細な繊毛を編み込むことで物理的な「腕」を形成し、特定の藻類をスプーンのようにすくい上げることに成功した。この画期的な進化は、食料不足に悩む深層の個体にとって、まさに夢の文明開化と言えるだろう。研究チームの藻類物理学者は「マリモが自ら進んで栄養を捕獲する姿は、静的な美学からの脱却を意味する」と語っており、今後はこの運動能力を利用した『湖底収穫祭』の開催も検討されているとのことだ。ただ、あまりに器用すぎる動きに「マリモが自律歩行を始める日も近いのでは」と、一部の保守派からは戦慄の声も上がっている。

この技術の背景には、近年の湖底における極端な栄養成分の偏在がある。これまでマリモは光合成によるエネルギー生産を主軸としてきたが、地球環境の微細な変化により、特定領域での栄養枯渇が深刻化していた。そこで科学者たちは、マリモの持つ自己再生能力を逆手に取り、細胞壁を一時的に柔軟化させて「延長腕」を生成する遺伝子スイッチを特定。このスイッチが作動すると、マリモの一部が数ミリ単位で突出部を形成し、周囲のプランクトンや養分を効率的に捕獲できるようになったのだ。なお、捕獲に使用された腕部分は食後に再び本体へと吸収・同化されるため、無駄のない極めてエコロジカルな設計となっている。このサイクルが安定すれば、マリモはもはや単なる植物の枠を超え、移動能力を持つ『自給自足型有機体』へと進化の階段を駆け上がることになるだろう。

科学誌『深緑の科学』への掲載後、マリモ界では「食う側になったマリモ」に対する賛否両論が巻き起こっている。SNS上では、自らの腕を使って食事を楽しむ様子を自撮りする『モグモグ・セルフィー』なる投稿が爆発的に流行中だ。一方で、一部の急進派からは「食事の効率を求めるあまり、光合成という聖域を放棄するのか」という過激な抗議デモも発生している。さらに、この技術を悪用した『栄養強奪事件』も発生しており、他個体の腕を盗み食いする不良マリモの出現が新たな社会問題として浮上した。湖畔の穏やかな風景が、今や食い気あふれる生存競争の戦場へと変貌を遂げようとしているのである。