阿寒湖のアイデンティティがついに崩壊の危機に瀕している。長年「完璧な球体」であることを美徳としてきたマリモ界において、このたび多面体へと変貌を遂げる『幾何学的脱皮』の事例が相次いで報告された。これまで「丸ければ丸いほどエライ」という風潮が強かった湖底のヒエラルキーだが、一部の若手マリモたちが「円形は抵抗の少ない妥協である」と主張し、自身の体をあえて正十二面体やピラミッド型へと強制進化させるトレンドが巻き起こっている。この急進的な変化は、従来の丸いマリモたちから「幾何学的テロリズム」であると強く非難されており、湖底の生態系における美学のあり方がいま、根底から覆されようとしている。

『幾何学的脱皮』を提唱した若手マリモ集団「ポリゴン・グリーン」によると、この変貌の目的は光合成効率の最大化と、湖底のわずかな突起に引っ掛けて強制的に回転させるという、省エネかつハイスピードな移動術の獲得にあるという。確かに、角があることで水の流れを捉えやすくなり、従来の球体では到達できなかった岩場の裏側まで容易にアクセスできるという利点がある。しかし、伝統的な「コロコロと転がる優雅な生活」を重んじる長老マリモたちは「角は刺さるし、何より見た目が痛々しい」と苦言を呈しており、湖底の平和なコミュニティは一気に分断。さらに、多面体化した個体は水流を受けると不規則にバウンドするため、湖底の静寂は失われ、夜な夜なカツカツと硬質な音が響く事態にまで発展している。

そもそも球体という形状は、光を均等に受けて内部まで細胞を活性化させるための最も理にかなった生存戦略であったはずだ。今回の幾何学的脱皮は、ただ単にトレンドを追い求めた結果なのか、それとも湖底の環境変化に適応するための生存本能なのか。専門家である藻類学者の意見も「単なる一時的な自己顕示欲」と「次世代への進化」で二分されている。いずれにせよ、湖の底で繰り広げられるこの美意識の闘争は、マリモたちが単なる藻の集合体ではなく、独自の美学を持つ知的生命体であることを改めて証明してしまったようだ。

SNS上では「推しがピラミッドになって泣いている」といった悲鳴や、「角があるほうが物理的に強そう」というポジティブな意見まで混ざり合い、まさに混沌を極めている。特に、幾何学的脱皮後のマリモが水流に乗って高速回転すると、まるで湖底のシュレッダーのような殺傷能力を発揮することが判明し、安全性を懸念する声も急増中だ。美しい球体という概念が過去のものとなる日は近いかもしれない。伝統派と革新派の対立は激化の一途をたどっており、来るべき「第1回湖底幾何学デザインコンテスト」において、一体どちらの形状が正義とされるのか、湖中の全マリモがその結末を注視している。