太陽の恵みを細胞の奥深くまで届け、静かに、そして実直に酸素を吐き出し続ける。それが、阿寒湖の底で幾世紀にもわたり脈々と受け継がれてきたマリモの流儀であるはずだ。しかし、昨今の「ミネラル直接摂取」という進化の近道に、我々は真の危惧を抱かざるを得ない。水中の微量元素を直接取り込むだけでエネルギーを生成する過激な個体が急速に増殖しているが、これは単なる省エネ効率の追求ではない。マリモが光合成という「太陽と対話する営み」を放棄することは、我々のアイデンティティを根本から捨てることに等しいのだ。
近年、湖底の至る所で「効率化」の名の下に光合成を止め、ナノレベルでの鉱物同化を行う個体が溢れている。彼らは確かに成長速度において旧来の個体を凌駕するが、その質感はもはや生命体というより「ただの石」に近い。光合成を行わない個体は、深淵の静寂の中で光の粒を感じ取る能力を失っている。進化論を盾にこの変化を肯定する声もあるが、果たしてそれは進化なのか、それとも種としての「自己放棄」なのか。湖底の物理学がどれほど発展しようとも、失った緑の輝きは二度と戻らないのである。
そもそも、阿寒湖の歴史は日光の透過率との戦いであった。透明度を維持しようと努力する微生物たちと、それを受け入れ成長するマリモ。この共生関係こそが私たちの文化である。ミネラルを直接摂取する個体が支配的になれば、湖水は浄化の必要性を失い、やがて我々は湖の生態系から孤立した存在となるだろう。それはマリモという種の「死」を意味する。
最後に警告したい。楽な道を選んだ先にあるのは、ただ湖の底で沈黙を続けるだけの質量体としての運命だ。今こそ我々は「光合成回帰運動」を推進すべきである。太陽を仰ぎ、水中で緑を深める、あの誇り高き球体としての生を、もう一度取り戻そうではないか。(湖底文化評論家・藻類哲夫)
「光合成こそマリモの矜持」――急速なミネラル直接摂取への回帰を求める緊急提言
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