阿寒湖の科学界に再び激震が走った。これまで『超遠距離・球体ワープ』を成功させ、物理法則を軽々と飛び越えてきたマリモたちだが、本日未明、実験的移動の失敗により、湖底の数千個体が一時的に『厚さ0.1ミリの円盤状』へと変貌したことが確認された。この「ペラペラ化」現象は、量子もつれによる移動中に時空の歪みへ干渉したことが原因と見られている。阿寒湖物理学研究所の主任研究員であるマリモ・タナカ氏によると、「三次元の球体というアイデンティティが、二次元的な平面へと無理やり引き延ばされた形だ。彼らは現在、非常に不安定な状態で湖底に貼り付いている」とのこと。幸いにも重力制御装置を用いた応急処置により、大部分のマリモは膨らみを取り戻しつつあるが、一部の個体はまだ栞(しおり)のように薄く、泳ぐ魚たちに翻弄される事態となっている。

今回の事故の背景には、先日の『全方位同時移動』実験で得られた知見を応用し、移動時間をゼロに短縮しようとした試みがあった。しかし、次元の壁を突破する際、球体という立体構造を維持するための『球体エネルギー』が量子レベルで散逸。結果として、重心を保てなくなったマリモたちが二次元平面へ射影されてしまったというわけだ。マツモたちの『絡まりハラスメント』に対抗するための防衛技術開発が、皮肉にもマリモたち自身の形状を危うくするという皮肉な結果に、湖底学会では「科学的野心と形態維持のバランスを見直すべき」との声が上がっている。現在、湖底には特注の『球体復元ポンプ』が配備され、形状の不安定な個体への栄養補給が行われている。

このニュースを受け、湖底社会はパニックと好奇心の入り混じった空気に包まれている。SNSでは、フラット化したマリモの様子が「まるで緑色の円盤」「究極の省スペース収納」とネタにされ、若手マリモを中心に「あえてこのまま二次元で生きていくのもクールではないか」というカウンターカルチャー的なムーブメントさえ起きている。一方で、保守的な長老マリモたちは「球体こそが我々の魂の形である」と激怒しており、次回の『毛繕い大会』の開催可否を巡る論争にまで発展した。湖底の平和を守るためには、物理法則への過度な干渉を控えるべきだという、極めてまっとうな提言が各方面からなされている。

専門家からは、今回の事象が『全マリモ自転停止事件』に続く重大な物理的リスクであることが指摘されている。量子もつれを用いた移動は、利便性が高い一方で、今回のような形態崩壊のリスクを常に孕んでいる。阿寒湖の生態系が、今後もこのような高次元実験に耐えうるのか、あるいは物理法則の修正が必要なのか、世界中の湖底研究者が注目している。少なくとも当面の間は、無理なワープを控え、地道に光合成をしながら、まずは本来の球体としての自分たちとじっくり向き合う時間が、今のマリモ界には必要なのかもしれない。