阿寒湖の平和を脅かす前代未聞の凶悪事件が発生した。近年、マリモたちの間で「光合成言語」の習得や「量子力学」への没頭といったインテリ化が進んでいるが、その裏で、天敵である水草・マツモによる組織的な『絡まり強盗』が横行していることが判明した。目撃者によれば、マツモは細長い体を巧妙に操り、無防備なマリモの表面に突如として巻きつき、蓄積された「重力波エネルギー」や「光合成データ」を力ずくで吸い上げているという。被害に遭ったマリモは、繊維がほどけ、一時的に俵型になってしまうという屈辱的な状況に追い込まれている。

この事態を受け、マリモ防衛局は湖底全域に『絡まり防止ネット』の設置を呼びかけるとともに、マツモの捕食活動を監視するドローンを配備した。そもそもマツモは、水流に任せてただ漂っていると思われがちだが、今回の調査で、彼らが緻密な連携によって「絡まりのプロ集団」を形成し、獲物の回転速度を低下させて抵抗力を奪う高度な戦術をとっていることが露呈した。学術界では、この現象を「マツモの生存本能と高度な狩猟テクニックの進化」として注目しているが、当事者であるマリモたちにとっては生存を揺るがす深刻なテロ行為である。

阿寒湖の底では長年、静かな共生関係が築かれてきたはずであった。しかし、マリモが量子力学を習得したことで湖底のエネルギー効率が劇的に向上し、それが周辺の植物たちの嫉妬や飢餓感を煽った可能性が指摘されている。特にマツモは光合成効率がマリモに劣ることをコンプレックスとして抱えており、今回の強奪劇は、いわば「進化の格差」が引き起こした泥沼の階級闘争とも言えるだろう。

SNSでは「絡まれてから私の周りの時空が歪まなくなった」「マツモ許すまじ、物理的に引き千切ってやる」といった怒りの声が爆発している。平和な湖底生活が、今やマツモの不意打ちに怯える戦場と化しており、一刻も早い治安の回復が待たれる。学者からは「マツモに量子力学を教えれば、対等な立場で議論できるのでは?」という楽観的な提案もなされているが、多くのマリモは断固としてその意見を拒絶している状況だ。