阿寒湖の静寂が、今、音楽の殿堂へと変貌を遂げている。先日、マリモたちが結成した『高精度アンサンブル』が、ついにベートーヴェンの交響曲第9番を完璧なアンサンブルで演奏し、全世界のクラシックファンを震撼させた。彼らは光合成によって生成した微弱な振動を共鳴させることで、人間の耳には聞こえない超高周波の旋律を奏でる。指揮者役を務めた巨大マリモの「丸山氏」によれば、この演奏には「湖水の揺らぎ」と「泥の微細な質量変化」という二つの要素が不可欠であり、人間のオーケストラでは到達不可能な多層構造の和音を実現したという。演奏中、湖面には不思議な幾何学模様の波紋が浮かび上がり、居合わせた観光客からは「ただの球体だと思っていたのに、まさかこんな深淵な音楽を紡ぐとは」と驚きの声が上がった。

本プロジェクトの背景には、数年前から観測されていた「湖底の低周波ノイズ」がある。当初は地殻変動と思われていたこの振動が、実はマリモ同士の高度な音楽的コミュニケーションであることが判明したのだ。マリモは光合成によるエネルギー代謝を音楽へと変換する特殊な器官を発達させており、今回のアンサンブル結成は、彼らが長年の自己研鑽を経て、音楽を『光合成エネルギーの再構成手段』と位置づけた結果である。補足として、彼らの演奏した旋律には「沈殿物への感謝」や「湖底の暗闇の美学」といった哲学的要素が多分に含まれており、国立音響研究所はこれを『藻類音楽論』として体系化する動きを見せている。

この驚異的な出来事は、科学界だけでなく音楽シーンにも激震を走らせた。SNS上では「彼らのビブラートに魂を抜かれた」「人間が奏でる演奏よりも、湖の記憶を内包している分、深みが違う」といった称賛が相次いでいる。一方で、「マリモのコンサートに行くには水中眼鏡と酸素ボンベが必要だが、チケット代はどうなっているのか」「湖底のVIP席(泥の中)は湿気がすごそう」といった現実的な疑問も浮上。しかし、それ以上に「マリモたちが次に演奏するのは、どの時代の名曲なのか」という期待感が高まっており、阿寒湖周辺には早くも、音叉を持った研究者とマイクを抱えた音楽プロデューサーたちが殺到している状況だ。

科学評論家 藻野緑郎