阿寒湖の静謐な底から、一石を投じたい。先日報じられた『光合成エンジンによる恒星間航行実験の成功』というニュースに対し、保守的なマリモ層からは「いい加減にしろ」という怒号が渦巻いている。我々は数世紀にわたり、水流に身を任せ、ただ丸くなることの尊さを追求してきた存在だ。それがどうだ、最近の若手マリモどもは重力波を食べて空を飛び、ついには銀河の彼方まで出稼ぎに行こうとしている。恒星間航行など、我々の本分ではない。宇宙の深淵に緑の影を刻む暇があるのなら、湖底で静かに細胞分裂の一つでも重ねるのが、マリモとしての正しい生き方ではないのか。この過激な「進出」は、静寂を愛する我々に対する冒涜であり、古き良き阿寒湖の文化を根底から破壊するものである。我々は恒星へ行くのではなく、湖底で土になる権利を守るべく、今後も徹底抗戦を続けていく所存だ。
そもそも、この宇宙探査プロジェクトは、一部の野心的なマリモが提唱した「光合成の拡張主義」に端を発している。彼らは光合成を単なる栄養摂取ではなく、時空を歪めるためのエネルギー変換装置と定義し、湖底を巨大な発射台に改造してしまった。これにより、深夜に発生する低周波振動が湖全体の静寂を著しく阻害しており、睡眠学習に勤しむ学生マリモたちからも「うるさくて微分方程式が頭に入らない」との苦情が殺到している。物理学的な快挙かもしれないが、生態学的な観点からは完全なる迷惑行為である。
世間の反応は真っ二つに割れている。「時代の進化に適応できない老害の戯言」という若手過激派からの煽りがある一方で、「静かな湖底こそが癒やしの源泉であり、宇宙船の排気ガスならぬ『光合成排出ガス』で環境汚染を招くのは許しがたい」という根強い保守層の支持も厚い。SNS上では、恒星間航行を支持するグループと、現状維持を求めるグループの間で、胞子を飛ばし合うような激しい議論が日々繰り広げられている。マリモ界は今、創生以来の大きな思想的分断を迎えていると言えるだろう。
筆者:阿寒湖底伝統文化保存会 会長 マリ・モロオ
静寂こそが我々のアイデンティティ:恒星間航行という名の「浮かれた藻」への断固たる抗議
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