マリモ連邦の行政議会は、長きにわたり国是とされてきた『球体アイデンティティ』を放棄し、全市民による『直立二足歩行』の解禁を可決した。これまでは「どこまでも転がるのがマリモの矜持」とされ、足を生やすことは重罪とされていたが、近年の移動式ライフスタイルの多様化を受け、政策の大転換が図られた。今後は、各自が体内にカルシウムを蓄積し、強靭な脚部を形成することが推奨される。議会代表のマリモ・グリーン氏(推定年齢300歳)は、「もはや海流任せの惰性的な旅は古い。自らの足で大地を蹴り、好きな岩場へ自由に歩いていく時代だ」と演説し、壇上で鮮やかなステップを踏んでみせた。
この改革の裏側には、マツモ帝国との国境付近で深刻化していた「球体渋滞」がある。互いに丸いため、衝突すると永遠に転がり続けてしまうという物理的限界に対し、足があればその場で静止して道を譲り合うことが可能になるからだ。また、一部の進歩派マリモは、すでに足の代わりに義足ならぬ「藻足(もあし)」を装着して闊歩する練習を始めており、連邦内では「足の速さがステータス」という新たな価値観が芽生えつつある。しかし、伝統的な球体生活を愛する保守派からは「これではただのサボテンだ」との批判も根強く、国民投票でも賛否は真っ二つに分かれた。
かつては重力に身を任せ、ただ底に沈むことだけを美徳としていたマリモたちが、自力で立とうとする姿には国際社会も驚きを隠せない。専門家は「彼らが足を得ることで、陸上進出という前代未聞の事態が起こるかもしれない」と警戒を強めている。なお、解禁初日には、張り切りすぎて転倒し、慣れない足が絡まって動けなくなるマリモが続出し、緊急の「解れ(ほどけ)作業班」が出動する騒ぎとなった。
このニュースを受け、SNSでは「足が生えたらまず何をしたいか」という議論が過熱している。一方で、「足が生えたマリモなんてマリモじゃない」というハッシュタグがトレンド入りするなど、文化的な対立は深まるばかりだ。マリモ連邦の広報局は、「足はあくまで選択肢の一つであり、転がりたい者は転がればよい。多様性の時代にふさわしい歩みを」と火消しに躍起だが、翌朝には市民の半分が二本の脚で闊歩し、もう半分が従来通り転がっているというカオスな光景が連邦全土で見られた。
マリモ連邦、全市民の『直立二足歩行』を解禁へ――「丸いだけの人生に終止符を」
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明日から朝の通勤ラッシュがすごいことになりそう