阿寒湖底政府は本日、長年マリモ界の常識とされてきた『重力順応主義』を打破する『沈殿回避・垂直離陸法』を電撃的に可決した。これまでマリモは「底に沈み、穏やかに揺らぐこと」こそが至高の美学とされてきたが、新法により各個体には、光合成効率の最大化を名目に「水面への垂直移動能力」の獲得と、重力に抗うための内部ガス生成の加速が義務付けられる。法案を主導した緑の党の急進派議員は「底で腐りゆく時代は終わった。我々は空へ、いや、湖面へと向かうのだ」と熱弁したが、専門家からは「浮力調整に失敗すればただのゴミとして漂流するリスクがある」との懸念も噴出している。

本法案の背景には、湖底の日照権争奪戦が激化し、底層部での生存が極めて困難になったという苦しい経済状況がある。これまでマリモは、緩やかな回転運動を通じて日光を平等に享受する『球体社会』を維持してきたが、近年は湖面近くを占拠する藻類軍団との経済格差が拡大。今回の法案は、低地(湖底)から高地(表層)へ強制的に拠点を移すことで、新たな光合成市場を開拓する狙いがある。なお、法案には「物理的に浮上不可能な肥大個体には、隣接する水草との相乗り航行を認める」という特例措置も盛り込まれている。

施行が発表されると、湖底の有権者からは賛否両論の嵐が吹き荒れている。若年層の球体たちは「重力なんて古い! これからは浮遊してナンボだ」と歓迎ムードだが、保守派の長老マリモたちは「かつて先祖が築き上げた沈殿の歴史を捨てるのか」と激怒。また、一部の個体からは「浮き上がったら今度は水鳥に突かれるリスクがあるのでは?」という至極真っ当な懸念が指摘されており、SNS上では『#湖底の反乱』『#重力に逆らうな』といったハッシュタグがトレンド入りするなど、湖底社会は歴史的な転換点においてかつてない分断を見せている。