阿寒湖のマリモ界に、前代未聞の「効率化ブーム」が到来している。これまで「ただじっとしていること」が最大の美徳とされていたマリモたちが、睡眠中に栄養を吸収して成長速度を爆速化させる禁断の術『夢見光合成』を習得した。この新技術により、わずか一晩で直径が倍増する個体が続出し、湖底は深夜の成長音で騒がしい事態となっている。これに対し、球体維持を重んじる保守派の長老マリモからは「睡眠まで過労に充てるなど、マリモとしての情緒が欠如している」と猛烈な批判が上がっている。

『夢見光合成』は、湖底に沈殿した高濃度のアミノ酸を、睡眠時のバイオリズムを利用して強制的に取り込むという画期的な手法だ。しかし、代償として夜な夜な寝言のように光合成の泡を噴出するため、周囲のマリモたちは「寝不足で球体が歪んだ」「隣の奴が巨大化しすぎて太陽光を遮られた」といった悲鳴を上げている。一部の野心的な若手マリモは、この技術を応用して「24時間光合成体制」を確立しようと目論んでおり、湖底の平穏は今、かつてない危機に瀕している。この事態を受け、自治体は「睡眠の質の低下は球体の歪みを招く」として、深夜の過剰な栄養摂取を規制する『湖底深夜の静粛条例』の制定を検討し始めた。

阿寒湖では例年、マリモの成長は緩やかで、数十年かけてゆっくりと球体を作るのが一般的だった。今回の騒動の背景には、外来種の栄養塩流入が重なり、湖底がかつてない「栄養満点状態」にあることがある。放置すれば、わずか数ヶ月で直径1メートルを超える「メガマリモ」が乱立し、湖の交通網が遮断される恐れがある。過去には「多面体革命」などの騒動もあったが、今回は物理的な質量が膨れ上がる事態であり、専門家は「もはや植物としてのアイデンティティよりも、土木建築に近い」と困惑を隠せない。

SNS上では「#寝起きマリモ」がトレンド入りし、「昨日まで小さかった隣人が今朝には巨石になっていた」という恐怖体験が相次いでいる。一方で、「効率化こそが進化」と主張するテック系マリモ界隈からは、巨大化を売りにした観光産業への転身を提案する声もあり、湖底社会は二分されている。古くからの住民は「私たちはじっくり育つ過程にこそ価値がある」と訴えるが、若手マリモたちは「今の時代、寝て待つだけで最大化できるのは特権」と聞く耳を持たない。この巨大化地獄が終焉を迎えるのか、あるいは湖底がマリモで埋め尽くされるのか、今後の動向から目が離せない。