阿寒湖の生態系が、かつてないエネルギー危機に直面している。長年のライバルである水草・マツモが、マリモの周囲に特殊な『光合成吸収フィールド』を展開し、太陽光を物理的に独占するという暴挙に出たのだ。マリモ学会の発表によると、このフィールドはマツモが編み出した「微細光線吸引術」によるもので、周囲の光を屈折させ、すべてマツモの細胞へ転送するという極めて強引な手法である。光を奪われたマリモたちは、自慢の丸いフォルムを維持するための『球体維持エネルギー』を使い果たし、現在、しなびた梅干しのような形状で湖底に沈んでいる。この卑劣な光の略奪に対し、マリモ防衛軍は緊急会議を招集。マツモの光合成を逆手に取った「鏡面反射カウンター作戦」の立案を急いでいる。

本来、マリモとマツモの間には、古くから「光のシェアリング」に関する紳士協定が存在していた。しかし、今回のマツモの行動は、昨今の異常気象による光合成効率の低下を懸念した末の、行き過ぎた自己防衛が暴走したものと推測される。マツモ側は「我々は生きるための最適化を行ったまで。マリモの丸さには、そもそもエネルギー効率上の無駄が多い」と開き直っており、両者の関係は修復不可能なレベルまで悪化している。現在、湖底にはマツモの囲い込みを突破しようと、マリモが高速回転しながら体当たりを試みる「突撃型藻類」の姿が多数確認されており、阿寒湖の平穏は崩壊の一途を辿っている。

阿寒湖の科学者たちは、この事態を「植物界における資源戦争の先鋭化」と定義し、警戒を強めている。光合成ができないマリモが死滅すれば、阿寒湖の美しき景観が失われるだけでなく、湖全体の炭素固定能力が著しく低下するという深刻な懸念もある。現状では、水流を操作してマツモのフィールドを物理的に引き裂く「ウォータージェット作戦」が検討されているが、マツモも負けじと『全方位反射膜』を生成しており、技術のいたちごっこが続いている。今や阿寒湖は、静かな湖底というよりも、高度な光学兵器が飛び交うSF戦場のような様相を呈しているのだ。

このニュースが報じられると、阿寒湖周辺の住民や観光客からは悲鳴が上がっている。「丸くて可愛いマリモのしなびた姿は見たくない」という切実な声から、「マツモのやり口はあまりにエグい、もっとフェアに戦え」といった批判まで、SNS上では連日論争が続いている。中には「マリモも形状を一時的に平べったくして、表面積を増やせば光を多く吸えるのでは?」といった合理的な解決策を提示する声もあるが、プライドの高いマリモたちは「球体こそ至高」として、その提案を頑なに拒否している。光を巡るこの仁義なき戦いは、いつ終止符が打たれるのか。我々はただ、湖の底で起こっている目に見えない激闘を見守るしかない。