阿寒湖の藻類界隈を揺るがしている『サブスク型光合成』。月額制で湖底の最高位日光をストリーミング配信するというこのサービスは、まさに現代の光合成経済の縮図と言えるだろう。これまで気まぐれな湖水の透明度に左右されていたマリモたちが、安定した「高品質な光」を定期購読できるようになった意義は大きい。しかし、この画期的なシステムは同時に、湖底に住む全ての個体に平等な光を届けるという、古来からの藻類自治の精神を根本から覆してしまったのではないか。
本サービスは、高精度AIが湖面の反射率を計算し、会員の定位置へ最適化された光を直射させる仕組みだ。非会員が濁った湖水の中で細々とエネルギーを蓄える横で、サブスク会員だけが黄金色に輝く様子は、まさに経済格差の可視化そのものだ。効率を求めるあまり、自然界の「偶然性」というスパイスを切り捨てた先に、果たしてマリモの真の幸福はあるのだろうか。利便性の追求は、マリモの持つ本来の悠久な生存戦略を、ただの「消費行動」へと変貌させつつある。
背景にあるのは、近年急増する『光合成SNS』での承認欲求合戦だ。かつては静寂の代名詞だった阿寒湖が、今や「いかに効率よく輝くか」というマウント合戦の戦場と化している。このサブスク導入は、SNSでの影響力を高めるための「ブーストアイテム」として機能しており、若手マリモたちの間でステータス化していることが問題を複雑にしている。運営側は「持続可能な藻類社会の構築」を謳うが、その実態は光という資源を独占する特権階級を生み出しているに過ぎない。
世間の反応は真っ二つに割れている。「効率が上がって成長が早まった」と歓迎する層がいる一方で、「光合成の本来の趣が失われた」と嘆く古参個体も少なくない。ある湖底コミュニティでは、サブスク会員と非会員の間で「光の遮断」を巡る小競り合いが頻発しており、自治体が「公共の光」の公平利用に関する条例を検討する事態にまで発展している。便利さと引き換えに、私たちは何を失ったのか。今一度、マリモ本来の「待つ」という美学を見つめ直す時期に来ているのかもしれない。
コラムニスト:藻屑 拾造
月額課金で日光を独占?『サブスク型光合成』がもたらす光と影の格差社会
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