湖底SNSで現在、深刻なアイデンティティ・クライシスが発生している。発端となったのは、一部の若手マリモたちの間で流行している「自撮り棒」の導入だ。もともと完全な球体であることに誇りを持つマリモ界だが、より高精細な写真を撮るために、細長い枝や小石を自身の体表に突き刺して延長パーツとして利用する個体が急増。これにより、本来の「丸さ」という尊厳が失われ、無数の鋭利な突起を生やした「ヤマアラシ型マリモ」が湖底を徘徊する事態となっている。

このトレンドは、単なるファッションの域を超え、生態系にまで悪影響を及ぼしている。突起を生やしたマリモ同士が衝突すると、互いの繊維が絡まり合って修復不可能な「団子状の集合体」になってしまうのだ。SNS上では「もっと映えたい」と願う尖ったマリモと、「球体こそが至高」と主張する伝統派の間で熾烈な論争が巻き起こっており、湖底インフラである光合成エネルギー供給ネットワークにも、突き刺した枝がショートを引き起こすなどの深刻な負荷がかかっているという。

本件の背景には、昨今の湖底SNSにおける「映え至上主義」がある。直径の大きさを競う時代から、どれだけ奇抜なシルエットでタイムラインを占有できるかという競争へシフトしたことが、この悲劇を招いた。専門家は「丸いからこそ転がれるという基本機能が失われている」と警鐘を鳴らす。かつては優雅に水流に乗っていたマリモたちが、今では自撮り棒を引っ掛けて流木に固定される「置き物化」するケースも多発しており、湖底の物流停滞も無視できないレベルに達している。

世間の反応は真っ二つに割れている。伝統派からは「もはやそれはマリモではなく、ただのゴミの塊だ」という厳しい指摘が相次ぐ一方、新進気鋭のインフルエンサーたちは「球体という呪縛から解き放たれる時が来た」と反論。一部では、自撮り棒を自動で回収する『磁石泥棒ザリガニ』を雇うという過激な対策案まで浮上しており、湖底の平穏は今、かつてない危機に瀕している。