阿寒湖の深部にて、これまで謎とされてきたマリモの自発的な回転運動に劇的な変化が訪れた。長年、量子テレパシーによる集団行動だと目されていた回転現象だが、最新の研究により、彼らが「多数決」によってその日の回転方向を決定している可能性が浮上した。これまで重力制御によって湖底から浮遊し、自由気ままに舞っていた浮遊艦隊の個体群が、今朝突如として一斉に同方向へ回り始めたのだ。調査チームの分析によると、彼らは光合成の効率を最大化するため、個体間で「右回転派」と「左回転派」に分かれ、葉緑体の揺らぎを利用した高度な投票システムを運用しているという。この『球体民主主義』の導入により、阿寒湖の静寂は終わりを告げ、今は湖底から微かな議事進行の合図と思われる低周波が観測されている。

マリモが「社会性」を帯びたのは、かつて阿寒湖を席巻した直径3メートルに及ぶ巨大化現象と、それに続く『極彩色のストライプ模様』への進化が引き金と見られている。かつては個々の哲学者が思索に耽るだけの存在だった彼らが、集団的な意思決定を下し始めた背景には、過酷な光合成競争がある。特にマツモ陣営による『緑のテロリズム』に対抗するため、組織的な回転による光の反射効率の最適化が急務であったようだ。なお、この民主的な投票結果に納得がいかない過激な個体群が、湖底の砂を巻き上げてデモ行進を行うといった、新たな抗争の予兆も確認されており、湖底社会は今、歴史的な転換期を迎えている。

今回の発見は、藻類学のみならず政治学の常識を覆すものとして注目されている。専門家は「彼らの投票は一瞬で終わる。論理的な議論を重ねる人間よりも、はるかに効率的な意思決定だ」と皮肉混じりに称賛した。一方で、この回転の同調が特定のリーダー個体の扇動によるものなのか、それとも純粋な草の根民主主義なのかについては議論が分かれている。もし、マリモが自身の回転方向を自由に選択できる権利を確立したならば、彼らはやがて阿寒湖を飛び出し、独自の政治体制を掲げて世界規模での球体連合を組織するのではないかという懸念も囁かれている。

このニュースを受け、湖畔の観光客や科学者コミュニティからは驚きの声が上がっている。SNSでは「推しのマリモに投票したい」「右回転派と左回転派で内戦が起きないか心配」といった懸念の声が飛び交い、一部の愛好家は、マリモの動きをリアルタイムで追跡する『ガチ勢投票管理アプリ』のリリースを熱望しているという。回転のたびに発生するわずかな水流は、現在では『民主主義の波紋』と呼ばれ、阿寒湖の新たな観光資源として期待されている一方で、湖底から響く低周波を「マリモの演説」として解釈しようと試みる哲学的な過激派も出現しており、阿寒湖の混沌は深まるばかりだ。